グルカゴン-highbloodglucoseさんのコメントへのコメント

グルカゴン、またまたです。
highbloodglucoseさんのコメントをいただいたので、それにコメントしてみました。

両者の意見が食い違うのは、元になる前提が違うからでしょうね。

それはそうでしょうね。前提が異なると、論理的な議論にはならいない可能性が大です。

江部医師の前提は、
・できるだけ1日を通して血糖値の変動がないようにする
・血糖値スパイクが問題である

江部先生のブログでは、

「AGEsの蓄積量=血糖値の高さ×持続期間」
で表せると思います。
ということは、平均血糖値の指標であるHbAicの値とその年数に
AGEsの蓄積量は比例することになります。

血糖値に関しては食後高血糖と平均血糖変動幅増大が
最大の酸化ストレスリスクとされています。

とありますので、HbA1cの高いことも食後高血糖もどちらもよろしくないとしていると理解しています。

デメリットとしては、
・スーパー糖質制限は生理的インスリン抵抗性を引き起こし、少しの糖質摂取で血糖値が上がりやすくなってしまう
・糖新生を亢進させるためグルカゴンの作用が強く出やすくなり、暁現象などで朝の血糖値が高くなりやすい
という可能性があります。

「スーパー糖質制限は生理的インスリン抵抗性を引き起こし」のメカニズムは私には理解できていません。糖質制限でインスリン抵抗性が高まるというデータはありますか?
糖質制限が暁現象に結びつくというのも良くわかりませんね。糖質制限の方が暁現象が多いというデータも見たことがありません。

それに対し鈴木医師の前提は、
・(スーパー糖質制限がNG食材とする)麦や豆類に含まれる水溶性食物繊維を摂取し、腸内細菌(酪酸菌?)を増やしてGLP-1分泌を誘導させれば、グルカゴンが抑えられる
・そのため、インスリンの効きがよくなる(見かけのインスリン感受性が高くなる)

理論としてはそうだと思うのですが、この食生活を続けると糖質制限グループより朝の血糖値が低くなるのか、実際にGLP-1の分泌が増加しグルカゴンの分泌が減少するのか、そういうデータがあるのかどうかわたしは知りません。

デメリットとしては、
・たとえ「質のいい」糖質であろうが、食後の血糖値が上がること
なのですが、

・食後の血糖値はピークで200を超えない、2時間値で140以下であればたいした問題はない

というのが鈴木医師の大前提です。

つまり、血糖値スパイクをどう考えるかが違うんですね。

江部医師は、1日の血糖値がフラットであれば血糖コントロールが良好に保てていると判断するでしょう。
一方、鈴木医師は、食後血糖値が上がっても、平均血糖値が低く保たれていれば良好であると判断するでしょう。
これでは両者の議論はかみ合うことはないでしょうね。

江部先生は、国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)2007年「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を引用し足りしてピークで160mg/dlを超える食後血糖値は大血管疾患、糖尿病網膜症、IMT肥厚、酸化ストレス→血管内皮障害、認知症、癌 のリスクとなる、としています。

ただこれも一つの主張と思います。
鈴木医師のピークで200を超えない、2時間値で140以下であればたいした問題はないというのも一つの主張です。

いずれも科学的真実(正解)とは言えないと思います。

あとは患者がどちらの主張にシンパシーを感じるかじゃないでしょうか。

まあ、そうかもしれませんが、命にもかかわりかねない自分の健康を、シンパシーを感じるかどうかでは決めたくはないです。
正解が定まっていないので患者が自分で決めるしかないのですが。

ニール・バーナード博士らの論文についての件は、単に遵守率の問題だと思います。みんな、厳しい食事療法(運動療法でも)守り続けるのが困難なんですよ。だから、守れなかった人の数値が上昇し、それが全体のデータを押し上げるわけです。
ヴィーガン食でもPBWFでもスーパー糖質制限でも、きっちり続けられれば血糖値も維持できるのではないでしょうか。

リバウンド(血糖値にもこの言葉を使ってよいのかわかりませんが)が順守率の問題であれば、そして、highbloodglucoseさんのおっしゃるように「ヴィーガン食でもPBWFでもスーパー糖質制限でも、きっちり続けられれば血糖値も維持できる」(私もどちらかというとこの意見を支持しますが)のであれば、、、、

「守り続けるのが困難なんですよ。」と決めてしまうのではなく、どうしたら守り続けられるのか、守り続けている人がたくさんいるのだから誰でも容易にできる方法がある、という見方とその方法の展開が重要なのではないかと思います。

以前も書きましたが、自分が栄養指導を受けた経験では、糖尿病学会の管理栄養士も糖質制限の管理栄養士も、食事療法継続のモチベーションや行動変容に関する知識もスキルもなさそうでした。まして医師は、対人コミュニケーションのスキルも不十分な人の方が多いように思います。これでは悪くなる患者が多くいるのも当然かもしれません。

コメント

  1. highbloodglucose より:

    糖質制限のデメリットの可能性についてはわたしの意見ではなく、鈴木医師の見解です。
    分かりにくかったですね。
    生理的インスリン抵抗性については、「方法論のまとめ」という記事で出てきます。
    https://ameblo.jp/suzukiclinic/entry-12372589844.html
    暁現象などの件は、糖質制限でGLP-1が減る→グルカゴン分泌亢進という流れからです。

    >守り続けている人がたくさんいるのだから誰でも容易にできる方法がある

    現状よりは患者のモチベが保てるようにできるかもしれないけれど、なかなか難しい気がします。
    たとえばニール・バーナード博士の論文のように、何らかの厳しい食事療法の効果を調べる研究の場合、おそらくは参加者に少なくとも研究期間中はその療法を続けてもらうように注意してフォローしていると思うのですが、実際のところどうなのでしょう。きちんとフォローしているにもかかわらず、脱落者が出てしまっているのだとしたら?

    わたしは、人は弱いものだという性弱説でものごとを考えがちです。
    ですので、食べたい物を我慢し続ける療法を多くの人に守らせるのは、並大抵のことではないんじゃないかと思っています。
    もちろん、ホリデーさんのように糖質を摂らなくても食べたいと思わなくなった、という人もいらっしゃるでしょう。

    >糖尿病学会の管理栄養士も糖質制限の管理栄養士も、食事療法継続のモチベーションや行動変容に関する知識もスキルもなさそうでした。まして医師は、対人コミュニケーションのスキルも不十分な人の方が多いように思います。これでは悪くなる患者が多くいるのも当然かもしれません

    これは重要なことですよね。
    この部分がもっと改善されて、ホリデーさんのように継続できる人が一人でも増えるといいですね。
    もっとも、その前に療法の選択肢が増える必要がありますが…

    • ホリデー より:

      「難しい」は現実の客観的な評価なのでしょうね。
      でも多くの人が、「難しい」といわれることを乗り越えてきた経験はしていると思うし、食事療法も多くの人が継続できるアプローチはある、という見方を私はします。
      人の可能性を信じたい性質ですし、広い意味では人の行動変容を支援することが自分の職業なので。

      ただ、どの食事療法がその人に最適なのか、これを見るけることは、今のところ難しそうです。
      少なくとも、自分がやっている方法が自分にとってベストだと信じてはいないですし、血糖コントロールがまあまあできているのでless worseの選択をしているのだろうと自己認識しています。