2型糖尿病の食事療法-日米糖尿病学会の方針の違い

厳しい脂質制限で糖尿病が改善するという説をしってから、糖質制限と対極の方法で糖尿病が良くなるとはどういうことか、と気になり続けています。

そこで、あらためて食事療法についてここまでのところをまとめてみました。

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日本糖尿病学会の食事療法

栄養素 摂取 比率について
糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、 一般的には、炭水化物50~60%エネルギ ー(150 g/日以上 日以上 )、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。この 炭水化物の推奨摂取比率は、現在の日本人平均摂取比率 がこの範囲にあり、他栄養素との関係からも妥当考えれる
2013 年 3月日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 より

勝手に意訳すると

糖尿病の食事療法は炭水化物50~60%、たんぱく質20% 脂質20~30%である(それしかない)
その根拠は、日本人の平均摂取比率による

です。

これについて私が疑問に思うことは以下3点です。

①2型糖尿病はインスリン作用不足による高血糖から生じる諸症状です。糖代謝が健康な人と異なるわけです。3代栄養素の一つの炭水化物の処理が健康な人と異なるから病気なのに、3代栄養素の摂取比率を健康な人と同じにしてよいのでしょうか。
風邪で熱を出している人に、健康のためには運動が良い、といって運動させるようなものではないでしょうか。

②この食事療法の効果(エビデンス)を見たことがありません。日本糖尿病学会は食事療法はこれしかない、といっています。しかし医学的エビデンスをみたことがありません。エビデンスがないということは糖尿病治療に効果がない、もしかしたら糖尿病を悪化させる食事療法であるかもしれないわけです。EBM(エビデンスベーストメディスン:根拠に基づく治療)に逆行するのではないでしょうか。

③3点目は私だけが考えていることかもしれませんが、食事を炭水化物、たんぱく質、脂質の比率でみること自体が、糖尿病治療にはあまり役立たないのかもしれないと思います。

例えば私の行っている糖質制限は、食後のピーク血糖値を180以下にするように食事の糖質量の絶対値でコントロールしています。結果的に炭水化物比率何%と表せますが、糖尿病治療の効果は糖質の絶対量で測定するのが望ましいと思われます。

たんぱく質や脂質について、動物性でなく植物性が良いとか、穀物について全粒穀物が良いなどの説がありますが、それらの真偽を確かめるとしたら、3代栄養素の比率だけでは調べようがありません。食事を3代栄養素で見ていること自体に問題がるのではないか、そんな気がしています。(あくまで素人の思い付きです)

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アメリカ糖尿病学会の食事療法

アメリカ糖尿病学会は

糖尿病の人には、誰にも万能な(“one size fits all” )食事パターンはない
多くの異なる摂食パターンが糖尿病管理に役立つ

としており具体的には以下の食事療法を認めています。

Mediterranean (地中海食)
心臓臓病、脳卒中、およびいくつかの癌を予防することが示されており、研究は血糖値を改善や体重を減らすのに役立つことを示している。

Vegetarian or Vegan(ベジタリアン と ビーガン)
一般集団での研究は、菜食主義が肥満、心臓病、癌、糖尿病のリスクの低下に結びつけている。
(原文は Research in the general population has linked …. )

Low Carbohydrate(低炭水化物食)
低炭水化食で炭水化物をどの程度摂取するかの基準は今現在は定まっておらず、糖尿病への効果は研究が続いている。

Low Fat(低脂肪食)
カロリー摂取量が減少し、体重減少が起こると心臓の健康を改善することが示されている。しかし、いくつかの研究によると、必ずしも血糖値や心臓病の危険因子が改善するとは限らない。

DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)
DASHは「高血圧を止める食事療法」の頭字語で、高血圧(高血圧)の人々の血圧を下げるのに役立つように設計されていて、血圧を下げるのに役立つ。

すぐ始める方法を探しているのなら(Looking for a quick place to start?)
糖尿病プレート法(The Diabetes Plate Method)は、上記の食事パターンのアイデアの多くを使用し、糖尿病の多くの人々のために出発するのに最適な方法です。9インチのプレートを使用し、多くの人々の第一歩は、今食べているよりも小さなプレートを使用する。、プレートの半分は非デンプン質の野菜、1/4はタンパク質食品、1/4は炭水化物にする

糖尿病プレート法(The Diabetes Plate Method)は、アメリカ流のバランスの取れたカロリー制限で、米国糖尿病学会はこれを勧めているようです。

尚、糖質制限(低炭水化物食)については、積極的に認めているというより、短期的には血糖コントロールや減量に効果がある(という研究結果があることは否定できない)、をしぶしぶ認めている、ということのように感じます。どちらかというと、糖質制限を行うことについて肯定も否定もしていない、そんな感じのようです。

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日本とアメリカの食事療法比較

日本とアメリカの食事療法の共通点

炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスの取れたカロリー制限を推奨している点では日本もアメリカも同じようです。日本とアメリカだけでなく他の国でもおおむね同じではないかと思われます。

そしてこのカロリー制限量療法での糖尿病治療への効果が低いことの間接的証拠が
・糖尿病は治らない
・進行性の病気である(徐々に悪くなる)
と多くの国でみなされている(ようである)ことです。
この食事療法では、糖尿病は改善されるより悪くなる可能性が高いと推測されます。

日本とアメリカの相違点

根本的に違うと思うのは、

アメリカ糖尿病学会は

糖尿病の人には、誰にも万能な(“one size fits all” )食事パターンはない
多くの異なる摂食パターンが糖尿病管理に役立つ。

としており

日本糖尿病学会は

炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスの取れたカロリー制限食しかない

としている点です。

これは、カロリー制限を推奨している点での共通点とは全く異なる、対極の考え方です。論理的には、どちらかが正しければどちらかが正しくないことになります。そのくらい根本が異なります。

この方針の違いにより、日本に住む2型糖尿病患者は、もし何かの病気で入院したら、日本糖尿病学会の推奨する糖尿病食を強要され、それを拒否すると責任を取れないからと手術などを拒否されることがありえます。(ネット情報では、実際にそのようなことが起こっているようです)

患者の自己責任による食事療法を認めてほしいと思います。積極的に推奨してくれなくてもよいのです。少なくとも否定しなければ、と思っています。

この記事、結構長期間あたためていた(考えていた)のですが、江部先生のブログでしらねのぞるばさんが随分前にとってもクリアに整理されていました。ウーン、まだまだわたしは勉強不足です。

糖質制限と脂質制限についてはまた別の記事にします。
(実はまだ考えがまとまっていません)

コメント

  1. しらねのぞるば より:

    > 積極的に推奨してくれなくてもよいのです。少なくとも否定しなければ、

    糖質制限食という言葉が世間に知られ始めた頃,日本糖尿病学会は全力でこれを消そうとしました.権威ある学会が「糖質制限は危険だ」と合唱さえすれば,一介の町医者の提案などたやすく潰せると思っていたのでしょう. 実際,2014年頃までの糖尿病学会・病態栄養学会での取り上げ方はひどいものでした.街の本屋ですら,江部先生の本が並び始めたというのに,学会と併催する医学図書販売コーナーには,江部図書は展示すらさせないどころか,アンチの本を売っていました.
    しかし,皮肉にも この学会による『危険だ』大コーラスによって,かえってテレビや新聞でとりあげられるようになり社会の注目を集めてしまいました. 実際その頃から江部先生は非常に多忙になっています.逆効果だったわけです.

    結果,今やコンビニやスーパーにさえ糖質制限食が並ぶようになったので,さすがに学会も潰すことはあきらめたと思います. 代わって現在行っているのは,『糖質制限食はやってもいいが,それはごく一部の限られた患者が,医師の指示の基にかなり面倒くさい条件をつけて行うもの』という『特殊治療』に押し込めようとしているのではないかなと考えています.
    このあたりは,学会幹部の寵児=京都府立医大のF教授の発言や雑誌投稿の変遷を時系列に整理して見れば明らかです.

    ただ,それでさえ頑強に反対している学会幹部がいるのか,その路線でさえ出るような出ないような,という状態がここ2年ほど続いています.

    • ホリデー より:

      糖質制限の歴史、ですね。
      糖尿病関連の専門情報を多く把握しかつ、客観的に分析する視点がないとこういう把握、できないですね。
      感心するばかり、というか、またいろいろ教えてほしいです。
      よろしくお願いします。