茶色の炭水化物の記事をたがしゅう先生が取り上げてくれました

糖質制限肯定派のたがしゅう先生が、UCLA助教授の津川氏の記事についてブログで取り上げていたので、その記事にコメントし、私のブログの記事 茶色の炭水化物を多く食べると体重が減る を紹介しました。

すると

私のブログの記事も取り上げて記事にしていただきました。(といっても私のブログ記事の内容にはほとんど触れてはいませんが)

茶色の炭水化物を取ると体重が減る、という研究について詳細に調べて論評なさっています。

とても長い記事なので、私が勝手に一部抜粋して以下引用させていただきました。アンダーラインは私がつけたものです。

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ホリデーさんのブログ記事では「総摂取エネルギー量が分析に使われていない」との御指摘がありましたが、その前に実は、そもそもこの文献の食事調査がどのようにして行われたかがはっきり書かれていないのです。

この文献ではアメリカにおける3つの大規模前向きコホート調査の結果を利用して、食品と体重変化の関係を明らかにしたと書かれています。

その3つのコホート調査というのは、1976年に登録開始となりアメリカ11州の女性看護師約12万人を対象に実施されているThe Nurses’ Health Study(NHS)、同じく1989年に登録開始となり新たに14州の女性看護師約11万6千人を対象に行われているThe Nurses’ Health Study Ⅱ(NHSⅡ)、そして1986年に登録開始となった全50州より約5万人の男性の健康のプロを対象としたThe Health Professional Follow-up Study(HPFS)です。

いずれも登録集団に対して食生活、運動習慣、病気の種類、投薬内容など、健康に関する様々な出来事を尋ねるアンケートを1-2年毎に送付し回答後、回収し集計するという調査で、3つとも現在も続いている前向きコホート調査です。

どうやって食事調査を行ったかについては一切書かれておらず、詳細な食事調査を行ったとされるそれぞれのコホート調査の指定年度のアンケート結果が利用されたであろうことが読み取れる文章となっています。

それから先に読み進めてみても、そのアンケートを何回行ったのかとか、食事内容が面接で確認されたのかなどは一切書かれておらず、

しばらくしてから急に「評価した食事因子は果物、野菜、全粒穀物、精製穀物、イモ類、ポテトチップス、全脂肪乳製品、低脂肪乳製品、砂糖入り飲料、スイーツ、デザート、加工肉、加工していない赤身肉、トランス脂肪であった」と、得られた結果だけが述べられていました。

NHS、NHSⅡ、HPFSそれぞれのサイトに入り、NHSの1986年のアンケート、NHSⅡの1991年のアンケート、HPFSの1986年のアンケートをそれぞれ閲覧してみました。すると、そこではFFQ(Food Frequency Questionnaire:食事摂取頻度調査票)と呼ばれる食事調査アンケート方式が用いられていることがわかりました。FFQというのは、食品名、その摂取頻度、1 回に摂取するおよその量(重量、容量、大きさ)を尋ねる質問票のことです。

例えば、ヨーグルト1カップを食べる頻度について、「1ヶ月に1度もない」「1ヶ月に1-3回」「1週に1回」「1週に2-4回」「1週に5-6回」「毎日」「1日に2-3回」「1日に4-5回」「1日6回以上」のどれかについてマークシートにマークするという感じで、それと同じ事が多数の食品に対して尋ねられるので、答える方は骨が折れる調査法です。

それでも3つのコホート調査での対象者は皆医療に関わるプロだからアンケートにも正確に答えるであろうという性善説の下にデータが取りまとめられている所があるように思えますが、実際のアンケートを見てみると想像されますが、気の遠くなるほどのアンケート項目の量に、医療者であっても自分なら途中からざっくりとした印象で適当に答えてしまうかもしれないと思ってしまいます。現にそれぞれのコホート調査で後年、食事調査を毎回行うのが大変だったのか、尋ねる食品数が少なくなっていたりとカットされている部分が見受けられました。

年度毎のアンケートで調査している項目が変わるとなれば、文献のように「茶色い炭水化物で体重が減少する」と言いたければ、

最初のアンケート結果での食事習慣がその後もずっと続いているという前提で結果を解析しなければ、そのようなデータを出せないということになります。

この文献の場合は体重変動をみた期間が4年間ということになっていますので、1回のアンケート結果が4年間持続したと仮定した上で出された結果ということになると思います。

ごちゃごちゃとややこしい話をしてしまいましたが、要するに私が今回言いたかったのは、えてして「かんじんなことは論文に書かれていない」ということです。

極めつけは、その論文で導かれた「茶色い炭水化物を食べている人では体重が減っている」という結果で、はたしてどのくらい減ったのかに関してですが、4年間で「-0.37lb(ポンド)」となっていて、これは-約0.167kg、すなわち100-200gの体重が減って有意差がついたと言っているのです。

100-200gの体重変化など誰でも日常的に起こっている体重変動です。それが4年間の時間をかけてようやく起こって来るという結果などはたして信用に値するでしょうか。

この研究結果が精緻な食事調査で行われ、得られた結果も正しい解析がなされ非の打ちどころのないデータであったと仮定します。それでもその論文データは個人に当てはまるわけではありません。要するに本当に茶色い炭水化物で体重が減るかどうかはやってみないとわからないという話になるのです。なぜならばその論文データは多数の人間を集めることによって個性を潰し、多様性を平均化して得られた結果であるからです

引用終わり  引用させていただいた たがしゅう先生のブログ記事はこちらです。

オリジナルのアンケートまで調べて考察されているのがさすがです(なんだか上から目線ですが)私にはとてもそこまで調べる気になりませんでした。たがしゅう先生はその分野の専門家で英語文献も多く読まれる方でしょうから時間もかからず苦にならないのかもしれませんが、それを読んでブログ記事にする労力はかなりのものだと思います。私のコメントがきっかけでそれをされたのだとしたらとても申し訳なく思いました。

たがしゅう先生の指摘をまとめると

① 調査データそのものの信頼性が低い
② 結果(減量)はわずかなもので、かつ個人にあてはまるとは言えない

だと思います。

これは、私が「ドクターシミズのひとりごと」も参考に一般化した説
糖質制限反対論の見方

2.食事のアンケートによるもの
5.統計や数字のマジック

に該当すると思いました。

*統計は自分も仕事で使うので、もっと突っ込んで記事にしてみてもいいかとも思いました。たがしゅう先生の指摘通りなのですが、糖尿病治療関連で見る調査研究の多くが、統計的には優位であるが、実際にはたいしたことのない差を課題に取り上げていると感じていますので。

糖尿病関連情報の見方については、糖尿病発覚10か月の勉強で随分力が付いたよう出す。と自己満足しています。
大切な課題は、糖尿病関連情報の見方ではなく、自分の糖尿病治療・改善なのですが、これは残念ながら進歩しないですね。

コメント

  1. デラシネ より:

    おまけですが。ドクター江部のブログへのコメント欄に
    <津川氏は「バナナやリンゴなどのいわゆる「糖質の多い果物」はどうだろうか。実は果物の種類と体重変化との関係は、別の研究(★7)で検証されており、バナナやリンゴの摂取量が多い人ほどむしろ体重が減っていたことがわかっている。種類にかかわらず果物の多くはダイエットによいと考えてもよい」と書かれておりましたので、その★7の文献を当たってみたところ、その文献の結論は「Vegetables having both higher fiber and lower glycemic load were more strongly inversely associated with weight change compared with lower-fiber, higher-glycemic-load vegetables (p < 0.0001). 」すなわち、糖質が低いほど、ウェイトロスと関連が強かったという内容でした。エビデンスベースだと言っているから一生懸命読んだのに、これではまったく逆の内容です。本当にがっかりして、怒りすら沸いてきてしまい、同じように思っている人がいるのではないかと検索していて江部先生のページにたどりつきました。>とかなりの不正があるようです。マキさんとおっしゃる翻訳家の方からのコメントでした。http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4657.html

    • ホリデー より:

      デラシネさん
      情報ありがとうございます。江部先生のブログ、情報の宝庫ですね。

  2. モン吉 より:

    ホリデーさん、こんばんは

    たがしゅう先生のブログ記事に取り上げられたのですね。
    たがしゅう先生は、江部先生のブログに書込みされている時から、存じていました。
    (お会いしたことはありません)
    とても誠実な先生という印象で、ブログ内容も、いつもとても説得力のある内容です。
    時々覗いていますが、書込みをした事はありません。

    くるくるさんの書込みは、驚きですね。1日の食事内容を詳しく知りたいですね。
    糖質制限なら、血糖値を上げるのは糖質だから、それを摂らなければ血糖値は上がらず結果、A1cも良くなるのはわかるのですが
    脂質制限で、どうして糖尿病が改善されるのか、減少したβ細胞が復活するのでしょうか?
    何か違うものがβ細胞の代わりをするのでしょうか?
    そのメカニズムが、私にはよく理解できません。

    • ホリデー より:

      モン吉さん
      たがしゅう先生はブログを拝見していて、ご自身の専門、科学に対してとても真摯に向き合っている方であると感じます。勉強させてもらっています。

      くるくるさんのケースは、本当に驚きですね。また記事にしつつ、いろいろとお聞きしてみたいと思います。いろいろなケースを教えてもらって、自分が取り入れることができそうか、考えてみるのも医学の専門アプローチではないですが、患者ができるアプローチなのかも、と思ったりもします。私にもとても不思議ですが、くるくるさんの書き込みを読んでいると、良くなっていることを実感されている様子が伝ってくるので、こちらもうれしくもなり、うらやましくもあり、興味津々です。