Vegan食(菜食)の糖尿病治療効果-バーナード論文2009

久々に論文の記事です。

食事(特にPFCバランス=蛋白質、脂質、炭水化物の比率)と血糖値や疾患との関係の論文には興味を失っていました。
また、しらねのぞるばさんからコメントをいただき、論文の評価はぞるばさんのような専門家に任せたほうがよい、と思っておりました。

そのことはほとんど変わっていないのですが、たまたま読んで面白いと思ったので記事にしてみます。

ついでに、なぜこの手の論文に興味を失ったのかも書いてみます。

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論文を読んだきっかけ

糖質制限は対処療法で、厳しい脂質制限は根治を目指す食事療法である(完治の可能性がある)とする鈴木医師のブログをたまに見ています。

2009年のニールバーナード博士らの論文の結果が紹介されていました。

糖尿病患者を49人と50人に分け、低脂肪(10%)高糖質(75%)のVegan(菜食)の食事とアメリカ糖尿病学会が推奨する食事との郡に分けています。黒丸はヴィーガン食ですが、HbA1cへの改善効果がみられています。

 

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食事と疾患や治療効果の論文でチェックしたいこと

このての論文に興味を失った理由は、データの信頼性の低いものがある、自分の食事選択への影響があまりないと思われるものが多いことがあります。具体的に気になる点をこの論文の例でみてみます。

データの信頼性

被験者は、それぞれの群の食事を本当に続けているのか

それぞれの群に割り当てられた食事を継続することは簡単なことではないはずです。何年後も同じ食事をしているはずだ、というような研究もありました。この研究の場合、1年以上の期間本当に継続できたのでしょうか。

参加者は22週間は毎週1回(22週以降は2週に一回)の食事指導の会議に出席、4,8,13,20,33,45、60週に参加者に予告なしの電話をされる(全員が毎回ではないのかもしなない)という、指導はかなりの徹底されているように思えます。
これは継続して指導がなされていることから、食事内容も継続されている可能性が高いと思われます。(どの程度の高さかは非専門家の私にはわかりません)

食事データの正確性

食事データは、0週, 11週, 22週, と 74週に各3日間のデータを取っているようです。データを取っていない期間は食事指導をしているから同じ食事が継続していると見なしているのでしょうが、さて、皆さんが被験者だったらどうでしょうか?記録を提出しない期間も指示された食事をしっかり続けますか?

食事データの正確性については、どのような調査票をどのようにつけていたのかを見ないと、被験者が負担が少なくかつ正確に記述することができるのか、判断はできません。のであまり疑うのもどうかと思うのですが、、、

被験者が摂取したカロリーと平均体重(開始時)は以下の通りです。

開始時摂取カロリー終了時摂取カロリー開始時平均体重
Vegan1798136697.0
米国糖尿病学会推奨1840142299.3

体重100㎏の人が、1800カロリ-で、100㎏を¥維持できると思いますか?
終了時の体重は数㎏減っていますが、1400カロリーで生きていけると思いますか?
これはやっぱりおかしいと思います。私の論文の読み方が間違っているのでしょうか。
もうそうなら指摘してください。

日本の栄養調査もそうですが、実態と20%以上も開きがある可能性があります。
もしそうなら、そのようなデータから行われた調査研究はどれも信ぴょう性が低いのではないでしょうか。

私が、食事アンケートに基づく論文に興味を失った最大の理由です。

これはこの研究に限らず、糖質制限の効果があるとかないとか、死亡率が高いとか低いという調査研究すべてについて同様です。

自分の食事選択への影響-どのような意味があるのか

被験者の参加動機

このような研究では、被験者はランダムに割り付けられます。この研究では乱数表を使用して無作為に割り当てられています。

この研究に参加した人は、ワシントンDCで新聞広告で集められています。どんな広告か見てみたいです。参加者の動機は食事療法の実施に大きな影響があり得ます。アルバイト料が支払われたのか、糖尿病を改善したい人が集められたのか? 参加者は糖尿病歴平均8.6年、6.5≦Hba1c≧10.5 で、BMI35 って、どんな人たちでどんな動機で参加したのでしょうか?

被験者の属性と自分との比較

結果の概要

Vegan:脂質10%、タンパク質15%、炭水化物75%、野菜、果物、穀物、豆類中心、動物性食品(肉・乳製品・卵)は避ける

米国糖尿病学会推奨:ADAガイドラインに基づく。日本糖尿病学会のカロリー制限と概ね同じ。

Vegan米国糖尿病学会推奨
開始時終了時開始時終了時
体重97.092.699.396.3
BMI33.932.335.934.8
HbA1c8.057.717.937.79
空腹時血糖値163.5144.0160.4146.4

Veganのほうが、体重も血糖値も改善効果が高いようです。

それはそうなのかもしれませんが、BMI35,体重約100㎏の人たちですから、体重さえ減らせばどんな食事でも改善するのは当たり前ではないか、という気もします。そのうえで、Veganのほうが効果が高いといっても、大きな違いではないのではないか、そんな気がします。

また、BMI35,体重約100㎏の人の効果が、ピーク時でもBMI24の私にも当てはまるかは??です。

被験者の属性は、自分の場合にも同じような効果(研究によってはマイナスの効果)が当てはまるかどうかの一つの目安になるのではないでしょうか。

Veganの効果を考える

この研究では、veganは、脂質10%ですから、鈴木医師の言うところの厳しい脂質制限です。

週1回から2週に1回の栄養指導を、会議に参加するというのは、かなり徹底している=普通はそこまでやることはそうそうない、というやり方だと思います。

厳しい脂質制限は完治も期待できるということであれば、それだけ徹底したやり方で1年間も行えば、かなりの方が完治に近づくことが期待できそうです。しかし、1年間での平均はHbA1c0.3の改善です。従来型のカロリー制限よりも効果があるのでしょうが、数字上は50歩100なのではないでしょうか。完治が期待できるのであれば平均値でももっと大幅な改善がされるはずです。ひょっとしたらごく少数が大幅に改善してその他の人はほとんど改善しなかったのかもしれません。(個別のデータも兵標準偏差も示されていないので何とも言えませんが)

昨今話題のプラントベースのホールフーズ(PBWF)は、Veganとかなり類似しています。Veganの結果から類推してはいけないのかもしれませんが、食事の内容がかなり似ていますから、これも効果があるのでしょうが、皆が完治するというような魔法の方法ではないような気がしています。
(完治す津人もきっといるのでしょうが、そうでない場合もあり得ると思います。)

それは、PBWF単体での大量観察の長期データが出てこないと何とも言えません。糖質制限も同様ですね。

結局、平均値ではなく自分一人の単独のデータがどうなるか、自分で考えて決めざるを得ない、という事になってしまいます。

ちなみに、これはこの研究データと比較対象にしてはいけないとは思うのですが、私のデータと今回のデータの比較をしてみました。

本来比較できないのは
・平均値と個体のデータの比較になる
・属性が異なる(BMI,糖尿病発症からの期間)
・私の場合、運動の効果もある
等の理由です。

緑色が私の数値の推移です。この論文のVegan の効果の程度を見る一つの見方ではあると思います。

コメント

  1. ろんり~うるふ より:

    ホリデーさんおはようございます。
    栄養学は、マクロ栄養素のPFCバランスしか解らないのでなんですが。

    摂取カロリー約1800→1400kcalは、多分、継続は無理かと思います。
    と言うのは、自分が(体重62㎏台)基礎代謝約1460~1480kcal。
    これは、生命維持で最低限(以下)、そのカロリーが必要になります。
    その他に食事で約1割、活動(運動・非運動)で約3割、1日消費されます。

    100㎏の人なら、個人差はあるにせよ、基礎代謝は1700kcal前後はあるかと思います。
    1700kcalとして、バランスカロリーは約2380kcalに。
    1800kcalなら、バランスカロリーは約2520kcalに。
    3ヶ月とかの限定期間なら可能かも知れないけど。
    長期間だと生命維持が出来ないと思います。
    それか寝たきりの状態か。

    週に1~3回、1日3000kcal前後摂っていれば、また変わるような気もします。

    生きていてこその健康管理・改善では、と個人的には思います。

    • ホリデー より:

      論文データの読み方が間違っているのかもしれません。
      どう考えても90~100kgの人の摂取カロリーが1400~1800というのはおかしいですよね。
      このようなデータで論文として良しとされるわけがないという気がしますし。

  2. ろんり~うるふ より:

    追伸です。
    自分のバランスカロリーは約2050kcalになります。