エビデンスレベルが高いことの糖尿病患者にとっての意味

エビデンスレベルということについてネットで調べて、医学の専門家でないなるほど自分が理解した(と思えること)とどうして?という疑問があります。

自分なりに理解したことは

エビデンスレベルはおおむねバイアスの少なさのレベルであるということ
(バイアスが少ないことが重要だ ということ)

バイアスというのは、たとえばA薬とB薬の効果を比較するために、A薬を飲んだ人とB薬を飲んだ人の変化を調べる場合、A薬を飲んだ人とB薬を飲んだ人の間に、それ以外の要因の違いがないようにすることです。

A薬を飲んだ人は毎日運動をしている、B薬を飲んだ人は運動していない、では結果の違いは、運動を行うかどうかに影響されている可能性がありえます。この場合の運動をしているかどうかがバイアスです。

RCT論文というのは、A薬を飲む人とB薬を飲む人をランダムに割り付けたということを意味すると思われます。研究者があなたはA,あなたはBと割り付けるだけで、バイアスが生じる可能性があるのでそれを排除する、というようなことです。調査を行うときにずいぶん面倒な方法を取る必要が生じますが、可能な限りあらゆるバイアスを排除しようということです。

バイアスを排除しようとするのは、医学に限らす、私のフィールド(経営学や心理学)でも同じです。エビデンスレベルという枠組みを作ってそれを評価しようというのは医学特有なのかもしれません。研究の結果として行われる医療は人の命にかかわる行為ですから、厳密さが求められる、ということなのでしょうか。

エビデンスレベルが高いということは、示された結果の測定誤差が少ないことを示している

といってもよさそうです。

たとえば、身長と体重の関係を調べようとして、体重測定するのに、服を着たままでは服の重量というバイアスがあるから、裸で測定してそのバイアスを取り除いた、というのがエビデンスが高いということです。体重も身長も測定誤差の少ないデータであることは「体重の重い人が身長が高い」という仮説が強く証明された、ということではありません。(測定誤差の大きいデータよりは確からしいとは言えますが)

RCT論文とかコホート研究には、統計的手法が用いられています。測定誤差が少ないデータを、統計という客観的な方法で確認することでより結果についての評価が確からしいということになります。統計を使って測定誤差の少ない大量のデータを使えば「体重の重い人が身長が高い」ということの確からしさ(確率)を求めることができます。

ネットでの論文の解説にたまに出てくるP値(P=0.01 とか)は確率を表しています。仮説が正しくない確率を示しています。P値が小さければ小さいほど仮説が正しくない確率が低い、つまり仮説が正しい確率が高いということです。

ただし、統計が示すこと、この場合は身長と体重の相関関係ですがそれが証明できるのは
「体重が重いほど身長が高い」ということの確率だけであり、、
「身長の高さは体重の重さの原因になる」ということではありません。
(よい例が思いつかなかったのですが、これは私の私見ではなく、統計学の常識というか事実です)

相関関係が因果関係(原因と結果)を示さない例はいろいろあります。インターネットで分かりやすそうな例を検索してみました。

相関関係:交番が多い地域ほど犯罪の発生率が多い。
因果関係:交番の多さが犯罪の原因だ
対策:犯罪の発生を防ぐために交番を減らそう

相関関係:インターネットの普及度と地球温暖化をデータ化したら相関関係が高かった。一つの論文だけでなく多くの論文もメタ解析したら、統計的に明らかである。
因果関係:インターネットの普及が地球温暖化の原因である
対策:地球温暖化を防ぐためにインターネットは使用しないことにしよう。

おかしいのは常識的に考えるとわかると思います。

統計を科学的検証、論文で用いるときには、相関があるというデータ(調査結果)をどのように解釈するか、が重要です。そこにはその分野の専門知識や論理的思考が必要です。

そのような科学的な検討を重ねて真実を解明しようというのが統計を使う学問、科学と言ってよいでしょう。

長々と糖尿病や糖質制限と関係なさそうなことを書いてきましたが、エビデンスレベルを重要視するとか、統計を用いるということは、そこで解明しようとしているテーマが因果関係が簡単にはわからない領域、テーマであるとも言えそうです。

「こんな論文があります。だから糖質制限が原因です」とか「だから糖質制限は危険です」という主張があったらそれは科学的なものではない、と解釈してもよさそうだということです。
さらに、科学者、専門家と呼ばれる人が、断定的に言っている場合は、その人を専門家として(少なくともそのテーマについては)信頼しないほうがよさそうです。

ところで、エビデンスレベルについてよくわからないのが、メタ解析やシステマティックレビューのエビデンスレベルが高いとされていことです。
一つの論文の結果だけでは確からしいとは言えないから多くの論文の結果から判断しようというのは常識的には正しそうに思えます。
疑問に思うことの一つは、論文の選択について、手続きを明確にしたとしても恣意的選択が生じやすい方法なのではないか、という事です。

たとえば、こんな情報がありました。

システマティック・レビュー論文のなかには、捏造や改ざん、盗用といった「不正行為」がある論文や、製薬企業などスポンサーとの関係があること(利益相反)を明記しておらず、バイアス(偏り)がある可能性のある論文を、見逃してしまっているものがあるとわかりました。調査結果は『BMJオープン』で今年3月2日に発表され、学術情報サイト『リトラクション・ウォッチ』が報じました。
(エナゴ学術英語アカデミーホームページから)

上記は、システマティック・レビューで取り上げた論文自体に問題がある場合があるということですが、加えてどの論文を取り上げるか、ということにも研究者の意図が入り込む余地があるような気がします。

 

コメント

  1. モン吉 より:

    ホリデーさん、こんばんは

    教えて頂いたコピペよく聞くのですが、恥ずかしながら方法知りませんので
    今回は分けて送信致します。

    エビデンスですが、重要な事は分かります。
    しかし、どの治療法にしてもエビデンスは当然最初から存在しません。誰かがある時、これが良いのではないか事で、始まりがあります。今の糖質制限食がそうだと思います。
    反対派がエビデンスが無いから認められないというなら、新しい事は何もできず何の進歩もしないでしょう。

    新しい事をする時は、厳しい批判を受ける事も多いと思います。
    糖質制限食での治療は「糖尿病学会の糖尿病専門医から出たものではない」といことが広まらない理由の一つになると思います。自分たちのプライドがあるからです。

    糖尿病学会は炭水化物(糖質)を摂らなければ、血糖値は上がらないというこんな単純な事を知らなかったのか? 学会はこれまで長い時間とお金をかけて一体何をやっていたのか? 学会は誰の為に、何の為に存在するのか?
    そういう指摘を受けるのが怖いのだと思います。
    その結果従来の治療法をずっと続けている為、毎年新たに合併症で人工透析を受ける人が16,000人以上、網膜症で失明する人が3,000人以上、下肢切断をする人が3,000人以上になります。

    糖質制限の効果を認めてしまうと、これまでの治療の結果、合併症になった患者さんから、集団訴訟を起こされるかもしれないという大きな不安もあると思います。ですから絶対に認めたくないのだと思います。学会の重鎮が入替っていかないと、認めるのは難しいでしょう。 つづく・・・

    • ホリデー より:

      モン吉さん

      コピペのやりかた、説明してみます。
      (1) コピーする対象範囲を指定
         対象の部分をマウスの右ドラッグで指定する
         (右クリックしたままマウスを動かす)
      (2)コピーする:Ctrl +c
         Ctrl  キーを押しながら、c を押す
      (3)ペースト(貼り付け):Ctrl +V
         Ctrl  キーを押しながら、V を押す 

      このブログのどこかを対象にして(1)(2)を行って、自分のワードなどのファイル上で(3)を行ってみてはいかがでしょう。
      やり方がわかるのではないかと思います。
      PCの操作を文字の説明で理解するのは難しいかもしれません。
      わかりづらかったら無視してください。

      では、続きのコメント楽しみにしています。

  2. モン吉 より:

    ホリデーさん、こんにちは つづきです。
    教えて頂いたコピペでやりました。

    昔、ガン治療で有名な「丸山ワクチン」がありましたが、ガン治療の専門医ではなかった為自分たちの仲間内ではない為、効果があったにも関わらず潰されてしまいました。これに似ていますね。

    糖質制限食は短期的に効果が出ているので、そこは学会も認めざるを得ない。しかし、「長期エビデンスが無いから危険だ」という主張をする。有名大学の偉い教授たちがそう言えば、一般の人は不安になるでしょう。
    学会が本当に糖尿病患者を助けたい気持ちがあるなら、良い治療法があればそれを研究してどんどん取り入れていくと思いますが、そのような動きはありません。

    又、そこには治療費という問題もあると思います。
    糖尿病治療は薬代、インスリン代、透析治療代等で病院は大きな収入を得ています。
    それを効果があるからといって、糖質制限食の治療法に切り替えてしまったら
    食事指導では全然儲からない事になります。
    ですから学会は「余計な事しやがって、そんな事したら全然儲からないじゃないか!」
    と糖質制限食を叩き、広まらないようにしていると私は感じます。

    これはまた、昔の薬害エイズ事件にも、ある種似ていると思います。
    アメリカでは、非加熱製剤は危険だから使用禁止になったにも拘らず
    それを知っていて日本では、在庫がまだ沢山あるから廃棄すると損になる為
    それを使い切ってしまえと、その結果はとても悲惨なことになりました。
    被害にあわれた方は本当につらい事でしょう。
    患者の事などあまり考えていないという点では、共通しているかと思います。

    以上、大変長くなりましたが私の妄想です。

    • ホリデー より:

      もん吉さん
      コピペ、使えたようでよかったです。なれるとより便利に使えると思います。
      いただいたコメントの内容は、よく似たことを考えていらっしゃったのだ、というのが率直な感想です。
      またまたこの一部を取り上げて記事にさせていただこうと思います。
      私の勝手な解釈でモン吉さんのおっしゃりたいことと異なっているかもしれません。
      そこのところはご容赦ください。