糖質制限を始めた理由ー医療従事者との間あげの相違

医療従事者であるピスタチオさんからコメントをいただきました。
ピスタチオさんからコメントは長いので、一部だけ紹介します。

ホリデーさんのブログに興味を持ったきっかけは、最近厳しい糖質制限を盲信して実践している人をネット上でよく見かけるのですが、何故彼らは安全な方法が未だ確立していない厳しい糖質制限を無条件に信じているのか?という疑問や、盲信している訳ではない人でも、糖質制限を始めた人が、どのような考えで始めたのか、また彼らがどのような情報を得て判断しているのか、といった事に興味を持った事です。

コメントを読んで、自分が糖質制限を始めたきっかけ、理由を書いてみることにしました。

糖尿病の発覚

体調不良を感じて近所の内科を受診。血糖値308で糖病病発覚。

「糖尿病だね。薬出すから2週間後に来て」と医師に言われ、

薬が出たことに驚いて(糖尿病って食事と運動といわれるものと思っていたので)心配になり
「え、インスリンとか必要になるのですか」

と聞いたら、うなずいて検査結果の用紙を押し付けそれ以上聞くな、という感じの対応だったのでその時点で質問をやめました。
(ほかの医者を捜そう、とそのとき思いました)

合併症は怖い

家に帰ってネットで糖尿病と、血糖値300から調べ始めました。まずわかったことは

合併症は怖い。血糖値300超えだと合併症を発症する可能性が高いレベル。すでに合併症になっているかもしれない
糖尿病は治らない。長期的に悪くなるのが一般的。10年から20年たてば多くの場合合併症が出る(確率や頻度の数字は発見できず)

糖質制限すれば血糖値は下がる

これは大変、何かできることはないのかとネット検索をすると

血糖値を上げるのは糖質なので、糖質制限すれば血糖値は下がる。合併症を発生させず、多くの場合、薬も不要

という情報にたどり着きました。また、糖質制限の問題点として、

・トータルカロリー不足になると体調不良など失敗する
・蛋白質の取りすぎ→腎臓へ負担のリスクあり
・脂質の取りすぎ→問題あるかも

などの情報もありました。

発覚初日の結論-血糖値を下げるために糖質制限を行ってみる

その日の結論として

・まずは合併症を防ぐために、血糖値を下げることを最優先するため、糖質制限をやってみよう。
・蛋白質の取りすぎや脂質の取りすぎの問題も気になるが、1,2か月で重大などのみちこれから何度も検査するのだから、検査で問題が出たり改善しなければやめればよい。

と結論を出して3か月は糖質制限をやってみようと決めて翌日から糖質制限を始めました。

初期の効果

それから約1週間後に、家の近くで糖尿病専門医を探して受診したところ

血糖値142と大幅改善で糖質制限を続ける気になりました。

医師の指示通りだと合併症になる

医師から、
「糖尿病は治りません、必ず合併症は出ます。ひどい場合は網膜症で失明したり、壊疽で足を切断したり、脳梗塞や心筋梗塞もあります。糖尿病の人は普通の人の30倍以上心筋梗塞の発症率は高いです。あなたの場合喫煙歴があるからさらに高くなります。糖尿病の治療とは、足の切断とか失明に至らずに生涯を終えるようにすることです。」ときつく言われました。恫喝に近いと感じました。

これで、糖尿病学会の医師の言うとおりにしていたら必ず合併症になるのだから、その方針には従わない、リスクはあるかもしれないが当面糖質制限でやっていこうと、はっきりきめました。

患者が治療に積極的になるように、大げさに言ったのかもしれませんが、脅して人を操作するやり方は許される方法ではない、が私の考えです。

こんな流れで現在に至っています。
二人の医師のおかげで今糖質制限を行っている、と言えなくもありません。

糖質制限開始時の経緯のまとめ

始めた経緯をまとめると、

糖質制限で血糖値が改善する事例がありかつ理にかなっていると思ったたから、であり、
その時点では「とりあえずやれることを試してみよう」が今日まで続いているという状況です。

糖質制限を1年実施した私の、糖尿病食事療法の考え

1.糖質制限は長期の安全性が検証されていないが、短期的(2年程度)には血糖コントロールに有効であることがわかっている。日本で普及を始めて15年くらいたつので10年以上長期的に健康を維持している人もでてきつつある。

2.糖尿病学会の推奨する方法は、糖尿病が進行し合併症発症に至ることが多いことが明らかになっている。糖尿病学会の推奨する食事療法に医学的エビデンスは見当たらない(エビデンスがないものをこれしかないと主張するのは科学者の集団と言えるのか?くらいにおかしいと思っています)

3.糖質制限は合併症を防げるが、耐糖能は向上しないので糖尿病の完治に至る方法ではない。厳しい脂質制限と菜食ベースの食事(高糖質)で糖尿病が治る、という説には興味津々です。そのうちやってみるかもしれません。治る、というのには惹かれます。糖質を取って食後高血糖の問題はどうなるのだろう?の疑問が解消したらやってみるかもしれません。

ピスタチオさんはこのようにもコメントされています。

私が糖質制限をされている方に対して心配に思う事は、
①糖質制限は実験・検証段階であり、安全な方法は未確立である事は理解しているのか
②糖質制限で体調が改善した事例も複数あるが、同時に体調を崩した人も大勢いる事や、寿命の短縮などの有害な結果となる統計データも複数上がっているといった、リスクの情報は持っているのか
という事です。
①を理解した上で、新しいメソッドを開拓するため、仮に健康を害する事になったとしても、自己責任で自分で人体実験をするのだ、というスタンスなら全く問題ないのですが、
糖質制限をしている方の多くが、糖質制限こそ最良の食事方法であり、安全性も証明されていると考えている方が多いので、心配になります。

このブログをご覧の方で、糖質制限を行っている方、特に糖尿病治療として糖質制限を行っている方がどのように思っているのか、このコメントを読んでどのように感じるのか、コメントをいただけないでしょうか。
私の感想はこの記事のタイトルの通りですが、私以外の人は違うかもしれず、知りたくなっています。

コメント

  1. しらねのぞるば より:

    先日は移動中にあわただしく書き込んだため,乱暴な表現になってしまいました.

    私の糖質制限食についてのスタンスをご報告いたします.
    ただ非常に長文です(時間がない時ほど,冗長な文章ができてしまいますね).

    ブログを2018/4月の途中まで読んだ時点で,ホリデー様と私とで,違う所・似ているところを書き出してみました.

    [違う点1]
    違う,というより驚いて感心したことです.

    ビジネスコンサルタントというご職業柄,人と接するには話し方が大事である,というご指摘にはさすがだなと感じました.
    また,まず正確なデータを収集する,権威のある人の言葉だからといって鵜呑みにはしない,という点も 他のことならいざしらず,医師についてこう言えるとはすごいです.

    >食事由来のコレステロールがコレステロール値を上げるものではないという
    >科学が立証したことと異なる指導を自分の経験から行うのであれば,
    >明確な根拠を示してもらわないと困ります.

    >ネシーナの効果を コントロール対比で実測した

    この時点で既にEBMを完全理解しておられますね.私は2年かかったのに,たった2ヶ月で到達しておられます.

    [違う点2]

    私は医学文献・医学情報は結構重視しています.
    江部先生のブログにも時折書き込んでいるように,ここ6年間,糖尿病学会や病態栄養学会の年次学術集会にはほぼ皆勤です(スケジュールの都合をつけやすい職種なので). また怪しげな巷の健康雑誌は無視していますが,欧米の医学雑誌・文献,特に米国糖尿学会ADAのGuideline,Statement,及び Diabetes Care誌は必ず目を通しています. 米国では健康保険も民間保険会社なので,杜撰な治療や,診療費を稼ぐためだけの治療をすると,保険会社と契約した監査医師に必ず突っ込まれて保険金支払を拒否されるのでいいかげんなことはできず,したがって米国の医学論文には根拠あやふやなものは少ないからです.

    [共通点1]

    糖尿病の発覚から糖質制限に至るまでのコースはほぼ同じです.

    http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3254.html

    若いころから職場の健康診断結果をグラフ化していて,Spot Dataではなく,Trendで自分の健康をモニターしていましたが,10年ほど前からじわじわと空腹時血糖値が上昇して(HbA1cは 4%台[当時のJDSで]で不変),ついに8年前に産業医から『注意した方がいいですよ』と言われました.その時点では血糖値124,しかも再検査では108だったので,直ちには糖尿病宣告とはなりませんでした. しかし,それがきっかけで血糖値測定器を購入し,食事内容と食後血糖値を頻繁に測定して,米・麺類を普通に食べると食後は軽く200を越えることに気づき,最初は専門医の言う通り,高糖質の1600kcalカロリー制限食と,電車は必ず2駅手前から歩くというウォーキングを実行したものの,血糖値は改善どころか悪化するばかりでした.当時は 仕事中も頭の中に【糖尿病】という単語がずっしりとのしかかっていました.ところが欧米,特に米国の文献を見ると,日本の医学文献とは全然違うことが書いてあり,そこからやっと江部先生のブログにたどりつきました.

    [共通点2]

    糖質制限で血糖値は食前・食後ともストンと落ちたのですが,暁現象による起床時の高血糖値には悩まされました.
    昼食前,夕食前の空腹時血糖値は80-90なのに,起床時だけは120を越える日が時々あったのです.

    しかし,過去6年間の朝の血糖値測定結果を整理してみると,
    糖質制限開始後3年目くらいから標準偏差が小さくなり 120を超える日が ほぼなくなっています.
    6年たった現在では 朝でも2桁の日がほとんどです.

    ホリデー様の場合も 糖質制限の効果が起床時血糖値にまで及ぶのは,もう少し時間がかかるのではないかなと感じました.

    • ホリデー より:

      しらねのぞるば さん
      ブログを読んでいただいたこと、恐縮です。EBM、理解したなどお褒めの言葉、頭に乗ります。
      心理臨床の学者が医学のEBMに刺激されてエビデンスを取ろうとしているのを横目で見ていてふーんと思っていたりしました。
      統計は、某学会に採択された論文も統計の有名な先生にも指導を受けにいったりしたのでそれなりに理解できます。
      特に疫学調査といわれるものは、社会科学とにているので、理解しやすいです。
      生物学、化学は数十年前から苦手なので医学論文などは読んでも頭に入ってこないと思います。

      ゆっくりコメントしたいのですが、本業多忙で、また時間が取れたらコメントさせていただきます。
      よろしくお願いします。

  2. にょろぞう18 より:

    こんばんは。
    自分は、約1年前、健診で、HbA1cが高いと言われたとき、糖尿病の知識はまったくなく、ちょっと節制すれば治るだろう、などと考えていた超ど素人だったのですが、血糖値が高いなら、血糖値をあげるものを食べなければいい、という単純な考えで、糖質を減らす食事に切り替えました。これが糖質制限というれっきとした食事療法だったと知ったのは、後に江部先生のブログや書籍、多くの方々のブログ等を読んでからです。同時に治らない病気だということもわかり愕然としましたが・・・。誰しも病気が発覚した直後は、とにかく高い血糖値を早く下げたいと、思うだろうと思います。それを見事に実現してくれるのが、糖質制限でしょう。自分も思い通りにHbA1cに加えて、体重、脂質などもみるみる改善しました。皆さんそうだったろうと思います。しかし、1年たった現在、体重は下げ止まり、脂質もやや増加に転じています。早朝空腹時血糖値や、糖質を取り過ぎたときの食後血糖値の爆上がりは、相変わらずです。この頃になると、糖質制限への疑問がわき始める方がいるのではないかと思います。しかし、自分は糖質制限を続けていくもう一つの理由があります。それは、合併症の問題です。長年高血糖が続いていたことによる、神経障害、未だに続いています、若干症状に変化は見られますが、それが寛解しているのか、悪化しているのかすらわかりません。医者に聞いてもまともな返事はもらえません。高血糖の記憶、これを少しでも減らすためには、血糖値が上がらない状況を、今からでも続けていく必要があると思うからです。そのためには、今の時点で最も有効なのは、糖質制限であると判断しています。今話題になっているPBHFでも合併症が改善した、という情報もあるようですが、糖質を摂ることによる高血糖のリスクは、
    今の時点では避けたいです。とりあえず、糖質制限と運動療法でしばらくはやっていこうかと思っています。神経障害の症状が治まることがあれば、脂質制限やPBHFも試してみようかなと思っています。ちなみに、ピスタチオさんのコメントで「糖質制限は自己責任で自分で人体実験をするのだ」という文面がありましたが、決定的な治療法がない現在、どんな療法を選択したとしても、すべて人体実験なのではないでしょうか。どんな療法にも、長期の有効なエビデンスがないのですから・・・。

    • ホリデー より:

      にょろぞうさん
      にょろぞうさんは、糖質制限を自ら編み出して実施していたのですね。これは驚きです。
      それはさておき、1年たって改善傾向が止まっていることやPBHFが気になること、など私と状況や関心はよく似ていますね。

      ちょっと違うなあと思ったのは、確かに人体実験といえば人体実験なのですが(世の中に正解がない病気に対処するのだから患者は全員人体実験です。日本糖尿病学会の言うことを信じるのも危険だと裏付けのあるリスキーな人体実験だと私は思います)

      医療者、それも糖尿病にも関わっている医師が患者に向かって、人体実験だ、ということには私は強い怒りを感じるのです。にょろぞうさんのように冷静ではいられません。

  3. にょろぞう18 より:

    よく読んでいなかったので、この方が医師の方だということの認識がありませんでした。たしかに医師からこの言葉を言われるのは抵抗がありますね。

    • ホリデー より:

      ご本人ははっきりと言ってはいないですが、どうもそうではないかと感じています。
      「最近厳しい糖質制限を盲信して実践している人をネット上でよく見かけるのです」
      「新しいメソッドを開拓するため、仮に健康を害する事になったとしても、自己責任で自分で人体実験をするのだ、というスタンスなら全く問題ないのですが」

      丁寧な文章の書き方ですが、こういうところに、患者をどのように見ているのか、が現れているような気がしています。
      糖尿病患者で、厳しい糖質制限を盲信して実施ている人などいてもごく少数だと私は思います。考えた末、心配もしながら実施している人のほうが多いのではないでしょうか。「盲信」という単語を平気で使えるあたりも、ある意味すごいと感じています。

      「真面目な患者さんは、現在の標準治療でも改善します。

      しかし多くの患者は、甘いものの我慢や食事量の管理も運動も出来ないので、結局薬の売り上げは大して変わらないのです。」

      よくならないのは、患者が不真面目だからだ、とされては、患者としては切ないですね。

      ある意味とても医師らしい見方だと感じています。

      記事にするか迷っています。

  4. kazukou1508 より:

    お邪魔致します。

    私は一型糖尿ですので、インスリン依存の闘病者です。
    例え糖質制限をしても、命を繋ぐ注射だけは止めることは出来ません。
    しかしながら、世で云う普通食を摂取すれば、今の総単位の3~4倍打たなくてはなりません。
    私は、糖質制限を血糖値を上げない為にが土台であるのではなく、インスリンを過剰に射たない。
    すなわち、生命の維持に必要な分以外は、最小限にするが土台にあります。

    そして、高血糖を防ぎ、他の血液検査も正常化させ、合併症の不安、憂いを下げるためにあります。

    そして、まだ二年半の糖質制限ですが、一食につき3グラム~5グラム程の糖質摂取。ケトン優位の極端な糖質制限者です。

    ピスタチオさんの
    「何故彼らは安全な方法が未だ確立していない厳しい糖質制限を無条件に信じているのか?」

    私がブログ上で知っている糖質制限者は、“無条件”に信じて実践しているわけでは、ないと思います。
    私も科学的に捉えて実践しています。

    人体実験と云うより自己責任の元、取り組んでおります。
    二年半前までは世で云う普通食だったわけですから、その経験上、今の私にはどう影響があるのか比べることも出来ます。

    しかしながら、糖質制限が合わない方、その取り組みで、体調を崩す方もおられます。
    極端な糖質制限者ではありますが、私も全ての方に有用な食事療法ではないと、考えます。

    選択肢の一つに日の目を見るときがきても良いのではとは思います。

    紛れもない事実として、
    少なくとも私は、この取り組みで、
    体調が良いですし、穏やかな日々を過ごせています。快を感じることが出来ています。それが、迷いなく続けていくことの最大の理由です。

    • ホリデー より:

      kazukou1508さん
      1型糖尿病で糖質制限をされているのですね。私には想像できないご苦労がある野だ塘路推察いたします。
      また、2型糖尿病のことばかり書いているこのブログにコメントいただいたこと、うれしく思います。ありがとうございます。

      選択肢の一つに日の目を見るときがきても良いのではとは思います。

      この考えは私もまったく同感です。万人に酔い絶対的なものである、ではなく、選択肢の一つとして認められてよいのではないかと思います。
      その際には、こういう場合に有効、こういう場合には有効でない、の情報がもっとはっきりするとより多くの人に役立つと思います。

      体調がよいのが何よりで、迷いなく続けていらっしゃるのがいいなあ、と感じます。
      私は体調が悪いわけではないのですが、大いに迷いながら続けています。