糖尿病が増加した原因

しらねのぞるばさんが、食事療法の迷走というシリーズ物の記事を書いていらっしゃいます。

第二次世界大戦後から話が始まっています。空音のぞるばさんの記事は、知らなかったことがたくさん出てくるのだ本当に勉強になるし、役に立ちます。記事をまとめるのにはかなりの時間もかかることと思います。頭が下がります。

第3回から、「昔は糖尿病が少なかった」は本当か という連載になりましたが、その記事を読んでいて、私も糖尿病って本当にそんなに増えているんだろうか、と疑問をもって調べて記事にしたことがあったなあ、と思い出しました。2年前に書いていました。読み返してみると、的確さやわかりやすさはぞるばさんには遠く及びませんが、それなりに面白い視点で書いているではないか、と感じました。
再掲します。少し手直しをしました

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日本人の糖尿病の増加

「国民栄養・健康調査」のデータです。。

HbA1c(NGSP)値が6.5%以上の人を「糖尿病が強く疑われる」
HbA1c値が6.0%~6.5%未満を「糖尿病の可能性を否定できない」

と区分した推定値です。

(画像は 糖尿病ネットワークから引用させていただきました。)

「糖尿病が強く疑われる」と、「糖尿病の可能性を否定できない」の合計は、

1997年1370万人が、2016年には2000万人に増加、20年で45%も増加しています。

さてこの原因は何なのでしょうか。摂取栄養素の比率(炭水化物、脂質、たんぱく質)はこの30年間ほぼ変わっていません。

では糖尿病増加の原因は栄養素以外の食事の問題でしょうか。

運動不足が原因でしょうか。

ストレスも糖尿病の原因になります。ストレスの増加が原因でしょうか。

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年齢と糖尿病の患者比率

(出所)社会実情データ図録

全人口(総務庁「人口推計」)に占める糖尿病患者(厚労省「患者調査」)比率
点線は2011年

糖尿病は年齢が上がるほど、患者率(有病率)が高まること、特に50歳代以上で大きく増えることがわかります。ということは、日本の高齢化(50歳以上の人口は増えたこと)が糖尿病増加の要因でしょうか。

これは2000年当時の日本の人口ピラミッドです。わかりずらくて申し訳ありませんが、ブルーの一番幅の広いところが50歳を少し超えたところです。段階の世代(終戦直後のベビーブーマー)が50歳代なかばに近づこうとしています。

50歳以上の年齢が、それまでも増加はしていますが、団塊の世代が50歳を超える1995年以降急激に増えることになるのはわかるかと思います。糖尿病の患者数の増加糖尿病感じじゃ率が高くなる50歳以上年齢の増加が影響している可能性があります。

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年齢比率を固定化したシミュレーション

そこで、「国民栄養・健康調査」のデータから、年齢構成の影響を排除したら、患者数の変化はどうなるかシミュレーションをしてみました。

①糖尿病患者及び疑われる者の推移(変化)は、「国民栄養・健康調査」の糖尿病が「強く疑われる」「否定できない」の年齢別の割合を使用しました。

②年齢別の人口構成は2000年の年齢別人口を固定としました(国勢調査の2000年(平成12年)の年齢別人口を用いました)

シミュレーションの結果は、平成19年まで増加しその後減少していることになります。

下に再掲する元データと比較してみてください。

シミュレーションの結果は、平成19年だけが突出して高く、あとは大きくは変化していない、とも見えます。(平成19年調査までHbA1cがJDS基準だったのですが、すでに医療機関などがNDSP値(JDS値より0.4高い)で測定していて、間違って患者数が増えた、ということは十分考えられます。)

年齢構成を変えないシミュレーションではここ10年間は糖尿病患者はほとんど増えていないことになります。

つまり、ここ20年の糖尿病患者の増加は単に人口の高齢化によるものであって、食事、運動などの原因によるものではないと言ってよさそうです。

食事とか運動ななどに糖尿病増加の原因があるのなら、患者としても治療の参考になると思ったのですが、年齢の問題となると、その現実を受け止める、ということ以外に、対策の打ちようがないですね。
結構時間をかけてあれこれデータを見たのですが、あまりに当たり前の結論になってしまいました。

ただ、少なくともここ20~30年の糖尿病増加の原因をあれこれ議論することは、ほとんど意味がないということがわかりました。

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余談-似ている事例

糖尿病とは関係ない話です。

20年くらい前自殺者の増加が社会的問題として取り上げられました。確か1998年ころから自殺者数が3万人を超え、厚労省を中心に行政、企業でも取り組みが行われました。その効果か2011年には3万人を割り込み、今は2万1千人位まで減少しています。

(出所)社会実情データ図録

確かに、自殺者数は増えています。
不況の時には自殺差が増えるようです。

これを先ほどのシミレーションと同じように人口構成を固定してシミュレーションすると少し違う見え方になります。

(出所)社会実情データ図録

好景気の時だけ自殺者が減り、その他の期間はほぼ一定、というふうに見えます。

自殺率(人口に占める比率)を年齢別にみると、男性の場合、年齢が高くなると自殺率が上がり、50歳代でピークを迎え、60歳代になると減少します。
日本の自殺者数が3万人を超えていた時期は、団塊の世代が50歳だった期間にほぼ一致します。

自殺者の増加と減少も社会の変化の影響ではなく(影響がゼロとは言いませんが)、人口構成特に団塊の世代の人数の多さの影響であるといってもよさそうです。

団塊の世代が日本社会に与える影響は大きいということですね。

コメント

  1. しらねのぞるば より:

    年齢調整については,ホリデー様のこの記事にも開設されているので,私の記事では省略しました.

    学会の報告などでも,さすがに高齢化の影響を調整した数字もあるようですが,そもそも1970年代以前は年齢別の発症率のデータが不明なので,そこはあいまいなままです.

    PCR検査や,最近オールドメディアがやっきになっている検察官の定年延長の問題でもそうですが,どうして原データ・法律原文にあたってみないのでしょうね.

    • ホリデー より:

      ぞるばさん
      更新後すぐに見ていただいてありがとうございます。
      年齢構成以外に、時系列の継続性(疾病のとらえかたとかデータの取り方)も大きいですよね。
      でも、情報として流れてくるときはそのような「真実」が省略されて、事実が都合おyくつかわれるのはよくあることで、、

      是非、ぞるばさんのブログでもいろいろな角度から解説してください。
      きっと、情報の見方について理解が深まる人が多いと思います。

      PCRも確かに、増やせばよいというものでもないらしく、しかしここまで他国より少ないのがよいこと(判断)とも思えなかったり、難しそうですね。
      定年延長は、なぜ今だったかの意図は??、芸能人などの半たんが盛り上がるのは???です。
      いろんな思惑や意図や操作がある、と思ってみております。
      そもそもあまり興味はなかったので、法律までみていませんが、良くわからずに扇動に載ることは避けたいものです。