糖尿病の治療法ー概要

2型糖尿病の治療は、血糖値が上がらないようにして合併症の発症を防ぐことです。
最初に血糖値がなぜ上がるのか、合併症がなぜ起こるのかを把握しましょう。

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血糖値を上昇・下降させる要因

血糖値とは、血液中のブドウ糖の量を表します。 血糖値が上がる要因

・食事をして、炭水化物がブドウ糖に分解され吸収される←これがほとんど
・体の脂肪などをブドウ糖に分解して血液に送る(糖新生)
・いくつかの血糖値をあげるホルモンの影響
などです。なかでも、食事による上昇が最も大きな要因です。

血糖値が下がる要因

細胞が血液中のブドウ糖を取り込むことで血糖値が下がります。
血液中にブドウ糖があるだけでは細胞はブドウ糖を取り込みません。
膵臓から分泌されるインスリンがあることで、細胞はブドウ糖を取り込みます。

インスリンの分泌が少なくなっているか、インスリンがあっても細胞がブドウ糖を取り込まなくなっている(インスリン抵抗性)か、あるいはその両方が起こっているか、が2型糖尿病患者の高血糖の主な原因銀員とされています

運動を行うことでインスリンがなくても細胞はブドウ糖を取り込みます。

纏めると以下のようになります。

尚、細かく言えば、蛋白質も少し血糖値を上げることがあります。大まかなポイントを理解するための図としてご理解ください。

糖尿病の治療とは、図の①~④のいずれかによって、血糖値をコントロールし、合併症を防ぐことが主です。

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合併症の原因

合併症の原因はまだ特定されていません。
食後の高血糖と血糖値の変動幅の大きさが血管にダメージを与え、動脈硬化の原因にもなり、合併症の原因にもなるのではないかといわれています。

「血糖値スパイク」で知られるようになった食後の血糖値の急上昇が注目されるようになっています。

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糖尿病の治療法

血糖コントロール(≒血糖値を下げる)糖尿病の治療法は、食事、運動、薬です。
加えて、私は自分の経験から、自己血糖測定も重要な治療法といってもよいのではないかと思っています。

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薬物療法

沢山の種類の薬があります。その結果、糖尿病患者の血糖コントロールがやりやすくなり合併症の発症が以前より防げるようになったという話も聞いたことがありますが、これだ!という薬、特効薬がないということでもあります。

糖尿病を治す薬は今のところありません。多くの薬が高血糖を防ぐための対処療法に過ぎず、薬を飲んでいてもどんどん糖尿病が悪くなる、合併症を発症することは十分にあり得ることは理解しておきま委は高け

ただ、このブログ主は、個人的になるべく薬を使いたくないという価値観を持っているので、薬への見方は厳しめかもしれません。

いずれにせよ、自分がどんな薬を処方されているのかは知っておいた方がよいと思います。

薬の種類や特徴はいずれ書き加えます。

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運動療法と効果

運動は、有酸素運動(散歩やジョギングなど)と無酸素運動(筋トレや短距離走など)があります。いずれも糖尿病治療に有効とされています。

短期効果:食後高血糖を防ぐ

運動をすると筋肉がエネルギーを必要として、血液中の糖分を使います。これはインスリンの分泌がなくてもおこります。食後に血糖値が上がっているときに運動をすると血糖値が下がるので、食後高血糖を防ぐ効果があります。

目安として、私の実感では30分の散歩(速足)で食後血糖値が50程度位は下がるようです。筋トレも同じか場合によってはそれ以上の効果があります。

個人差もありますし、個人の中でも運動を始めたころと運動を継続した後では変わってきます。
自分の効果を把握することが血糖コントロールに役立つと思っています。

中長期効果

質的効果:血糖取り込み能力が高まる

筋肉は血中のブドウ糖を取り込みますが、運動不足が続くと、ブドウ糖取り込み能力の低下を生じます。また、運動により、腸管からインクレチンの一種であるGIPという物質が分泌され、膵臓のβ細胞機能が回復しインスリン分泌能が改善します。

運動は、インスリン抵抗性の改善にもインスリン分泌の改善にも効果が期待できるのです。

量的効果

筋肉量が増加すると血糖の取り込み量が増えます。同じインスリン量でも糖の取り込み量が増えるのですから、いわばインスリン抵抗が弱まる(インスリン感受性が高くなる、とも言います)と考えてよいでしょう。

運動はやりすぎなければ健康に良いことは誰もが知っています。また病気の治療としては間接的効果と考えがちですが、糖尿病の場合には血糖値を下げる直接的な治療効果があります。

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食事療法

日本糖尿病学会の推奨する食事療法

日本糖尿病学会の勧める食事療法は、摂取エネルギー量(総カロリー)と三大栄養素の比率が決まっています。

摂取エネルギー量

摂取エネルギー量=標準体重×身体活動量
*標準体重=[身長(m)]×[身長(m)]×22
*身体活動量(Kcal/kg 標準体重)
=25~30 軽い労働(デスクワークなど)
30~35 普通の労働(立ち仕事など)
35~  重労働(力仕事が多い職業など)

私は、身長182㎝なので、標準体重は1.82×1.82×22≒73㎏
摂取エネルギー量は73×25(デスクワーク)≒1,800 です。

多くの場合、このエネルギー量は通常の食事量より2~3割少ないので、これを守れば体重減少します。私は実際にはこの食事法を行っていないのですが、この食事量を長期間キープするのはかなり大変だと思われます。そして、医師から指導したとおりにやらないから糖尿病が悪くなるのだ、と叱られることになりそうです。よくあるケースのようです。

三大栄養素の配分

炭水化物を50~60%、たんぱく質は標準体重当たり1.0~1.2g、残りを脂質で摂取する。
標準体重と蛋白質摂取量の計算(1.0か1.2か)などにより変わってきますが、
概ね、炭水化物60%、たんぱく質20%、脂質20%程度が目安になります。

日本糖尿病学会の勧める食事療法の効果

今のところこの食事療法の効果を示すデータ、論文を見たことがありません。(医学関係者でない患者の一患者にはわからない情報がどこかになるのかもしれませんが)

摂取エネルギー量を大きく減らすことで血糖コントロールが改善した研究報告を見たことはあります。これは欧米のもので対象がかなりの肥満の方です。やせ形でこの食事療法で効果が出たエビデンスを見たことがありません。一人の事例として私はよくなったという話はもちろんありますしそれを否定するものでありません。

日本だけでなく、欧米の多くの国でも、おおむね日本糖尿病学会と同じような栄養素比率による食事指導が行われてきたようです。
また、2型糖尿病は治らない病気で徐々に進行する、が定説ですから、併せて考えると、「この食事療法は、2型糖尿病を徐々に進行させる食事療法である」可能性が高いと私は思っています。

アメリカ糖尿病学会の食事療法

アメリカは糖尿病とその治療の戦線国のようで、日本糖尿病学会の指針、ガイドラインなどにもアメリカ糖尿病学会の方針やでーたがしばしば引用されています。

1980年台に、炭水化物比率55~60%が推奨されるようになり、それが30年ほど続いてきており、日本糖尿病学会もそれを参考にしてきたものと思われます。

2013年のガイドライン

Nutrition Therapy Recommendations for the Management of Adults With Diabetes

日本糖尿病学会の食事療法は、ひとつだけですが、アメリカ糖尿病学会は

糖尿病の人には、誰にも万能な(“one size fits all” )食事パターンはない
多くの異なる摂食パターンが糖尿病管理に役立つ。

として、以下のいくつかの食事療法を認めています。

Mediterranean (地中海食)
Vegetarian or Vegan(ベジタリアン と ビーガン)
Low Carbohydrate(低炭水化物食)
Low Fat(低脂肪食)
DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)

Low CarbohydrateとLow Fatは、3大栄養素の比率で考えれば対極で、その両者がどちらも進められているのは矛盾しているようにも思えます。
しかし、アメリカの2型糖尿病患者にはどちらも有効な場合がある、ということのでしょう。このあたりはアメリカの糖尿病事情を知ると想像できるようになりました。

ちなみに、アメリカ糖尿病学会のサイトや関連の糖尿病雑誌のサイトを見ると、糖質制限(低炭水化物食)は、積極的に認めているというより、短期的には血糖コントロールや減量に効果がある(という研究結果があることは否定できない)、をしぶしぶ認めている、ということのように感じました。どちらかというと、糖質制限を行うことについて肯定も否定もしていない、そんな感じのようです。(2018年10月当時)

2019年4月発表のコンセンサスレポート

炭水化物、タンパク質、および脂肪からのカロリーの理想的な割合はないことをエビデンスが示している。

としたうえで、

地中海食
ベジタリアンorビーガン
低脂肪食
超低脂肪食(Very Low-Fat: Ornish or Pritikin Eating Patterns)
低炭水化物食or超低炭水化物食
DASH食
パレオ食
間欠的ファスティング

を取り上げています。

糖尿病患者が炭水化物を減らすことで、血糖コントロールを改善することをに最も多くのエビデンスがある

血糖値の目標を達成しない糖尿病患者や薬の量を減らす患者には、低炭水化物食か超低炭水化物食で炭水化物量を減らすことが実行可能

など、かなりはっきり糖質制限を認める記述があり、アメリカ糖尿病学会では、糖質制限食が推奨されるようになりつつある、と感じられます。

日本とアメリカの糖尿病学会の食事療法に関する違い

日本糖尿病学会は、三大栄養素の比率を一つに定めています。
(炭水化物を50~60%、たんぱく質は標準体重当たり1.0~1.2g、残りを脂質)
日本糖尿病学会は、炭水化物50~60%が正しい、としているわけです。

アメリカ糖尿病学会は、

炭水化物、タンパク質、および脂肪からのカロリーの理想的な割合はないことをエビデンスが示している。

これが決定的な違いだと思います。
日本糖尿病学会の決めている炭水化物を50~60%の食事が糖尿病治療に有効であるというエビデンスはないにもかかわらず、なぜそれを自信をもって患者に勧めるのか、患者としてとても「おっかない」団体であると私は思っています。

糖質制限食

糖尿病治療としての糖質制限食の定義は明確に定まっていません。
主な混乱は
・糖尿病治療としての糖質制限と、健康維持やダイエット(体重減少)のための糖質制限が同じ糖質制限として扱われること
・糖質制限の程度が異なるもの、江部先生の推奨するスーパー糖質制限は炭水化物比率10%程度ですが、淡水化物20%も40%も同じように糖質制限と言われること
・糖質制限での総カロリーについて、認識があいまいであること
などです。

私の考える2型糖尿病治療のための糖質制限は、以下のようなものです。

考え方
・糖尿病は基本的に治らないので、糖尿病の進行を防ぎ合併症の発症を防ぐとかが治療の重要な目的
・合併症の発症の原因は特定されていないが、は高血糖による血管の損傷により発症するのが有力な説である。
特に、食後の高血糖と食後の血糖値の変動幅の大きさが血管を損傷することがわかっており、それを防ぐことが合併症予防になると考えられる

・食後に血糖値が上がるのは、糖質摂取が原因なので、糖質接収を少なくすることで食後高血糖を防ぐことができる

実施の目安
・糖質摂取は、食後高血糖を防ぐことができる糖質摂取量に抑える
・摂取カロリーは、一日に必要なカロリーはしっかりとる(必要以上にはとらない)

私の基準
・食後血糖値 1時間値180以下 2時間値140以下
・摂取カロリー 2400カロリー程度
  *日本糖尿病学会の基準では1800~2000カロリー程度
   推定エネルギー必要量からの計算では2600カロリーです。
   ちなみに現在、日々のカロリーは計算しておらず、お腹いっぱい食べる、
   体重計でやせない、太らないようにチェックだけはする生活です。

 

自己血糖測定

血糖値を測定したからと言って血糖値が下がるわけでははありませんが、

食事や運動の効果がわかりますから、食事、運動の指針になります。

自分の血糖値の傾向がわかりますからそれも対処の指針となりえます。

ですから、自己血糖測定は糖尿病治療のとても重要な武器、治療方法と言ってよいと思います。

日本では、インスリンを使っている人しか血糖測定器は保険診療に認められません。これは日本糖尿病学会が治療としての日々の血糖コントロールの必要性を認めていないことの間接的証拠と考えてよいのではないでしょうか。残念なことです。また、日々の血糖値測定の結果について糖尿病専門医に相談しても、糖尿病専門医はそのとこについて知見がなく、的外れな回答しか得られないことが多くなりそうです。

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