糖質制限糖尿病治療にSGLT2阻害薬(ジャディアンス)を頓服(とんぷく)として使う

SGLT2阻害薬(ジャディアンス)を1年位、頓服として使っています。
糖尿病治療薬を頓服として使う例は少ないようで、薬局では不審がられたりします。

頓服(とんぷく)とは

goo国語辞書によれば、
対症療法として薬を何回にも分けずに1回に飲むこと。発熱や痛みなどの症状が出た際に、薬を1回だけ飲むこと。また、その薬。1回服用する分を一包にしてある。

この意味は、正しいのですがちょっとピンとこないです。

薬局大手の日本調剤のホームページには
食後など決まった時間ではなく、発作時や症状のひどいときなどに薬を飲むこと

とあります。この方が、私にはしっくりきます。

糖質を自分の許容量を超えて摂取することが数日続くときに、食後高血糖を防ぐために使用する

これが、私流の、糖尿病治療薬の頓服としての使用です。

糖質制限による糖尿病治療に頓服が必要な理由

私の生活では、外食が続く2つのパターンで頓服のニーズがあります。

提供される外食が数日続くとき

数日間の研修参加や今週の講師を行うときなど、宿泊先の施設で提供される食事をとるしかなく、自分で食事の選択ができないときがあります。1,2食なら食べない選択でも問題ないのですが、数日間食べないのはつらいので、薬に頼ることにしました。

ナッツ、チーズ、糖質の少ないプロテインバーなどを持参して補食をできるときはするようにはしています。

頓服を使うと言っても、昼食は麺類、夕食はカレーライス、というようなメニューではほとんど食べられないので、そのような食事であるとわかっているときは、参加しない、仕事を引き受けないという選択をするようにしています。

ただ、提供される食事が100%把握できるわけではないので、初めての施設に宿泊しないといけないときは結構気が揉めます。

旅行を楽しむため

もう一つのニーズは、楽しむための旅行の際です。

約1年前(糖尿病発覚半年、HbA1c 6.0)に、妻と約1週間の国内ドライブ旅行をしたのですが、昼食に困りました。観光地の昼食は、麺類、丼物などおいしそうで炭水化物の多いものが大半で、私のように15g/食にしようとすると、コンビニで購入する以外ほぼ選択肢がない状態でした。一緒に食事をする妻にも申し訳なくなります。

糖質制限可能な昼食を探す旅をしているような気分にもなり、旅行の楽しみが半減したような気がしました。

ちょうどそのころは、糖質制限の食事にも慣れ、HbA1cも6.0まで下がって合併症のリスクも下がったと思えて、一息ついていた頃でした。

一方で、糖質制限と食後の運動のことを常に意識して生活している状態で、「糖尿病治療のために生きているようだ」と感じることもあり、少しは糖質制限を緩めてもいいのではないか(たまには食後血糖値が200を超えてもいいではないか)と思うようになりました。

一人で出張していれば、食事の楽しみより血糖値上昇を防ぐことが優先なのですが、奥さんと二人で旅行をしていて、私の食事のために奥さんが気を遣いすぎたり楽しめないのでは、申し訳ないだけでなく、私も楽しくないので、人生を楽しむための糖尿病治療である、そのためなら少しは薬を使ってもよいではないか、と考えるようになりました。

頓服薬の選択

DPP4阻害薬は効果が今一歩

最初に処方されてほとんど使用せず大量に持っていたDPP4阻害薬(ネシーナ:武田薬品)は、私の感覚では食後血糖値を10~20下げる効果がありました。ただし比較実験をやってみたわけではないこと、そもそもそれほど使っていないこと、使ってのは糖尿病発覚初期のころであること、などなどから、あくまで私個人の感覚です。

血糖値下降の定量データ(HbA1cではなく、日々の血糖値の)は見たことがないので、自分の感覚論を私は判断の材料にして、DPP4阻害薬はあまり効かない薬だと思っていました。

心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合アウトカムはプラセボ薬とほぼ同じ(≒心血管イベントの抑制に効果がない)との研究結果もこの薬の使用する気を失せさせるものでした。(全く効果がないわけではなく、HbA1Cを下げる効果はあることはわかっています。)

SGLT2阻害薬が効果的か?

SLGT2阻害薬は、毎日70~90gの糖をブドウ糖が尿から排泄する効果があるとされています。一日3食とすると、毎食20g位の糖質を排出してくれるとして食後血糖値のピークを50~60くらい下げてくれるのではないかと期待できます。DPP4阻害薬に比較して血糖値を下がる効果が大きいと思えました。

心血管疾患による死亡,心血管イベント,および全死亡の発症率を低下、との研究結果もあります。

SLGT2阻害薬は、血中のブドウ糖を尿に排出させる薬で、インスリンとは無関係ですから膵臓に負担をかけないのも悪くないと思います。

SLGT2阻害薬は、いわば強制的糖質制限で、たとえは悪いですが、食べたものを吐いているのと同じです。そんなことをするんだったら食べなきゃいいじゃん、が通常の私ですが、やむなく糖質を取らざるを得なかった、旅行先で甘く美味しいものを食べてしまった、そんな時はあとで吐いてもまあいいか、と考えました。

そのようなことで、SGLT2阻害薬を使ってみようと思い主治医に相談したところ、「SGLT2阻害薬を頓服として使っている人もいますよ」
、とのことであっさり処方してくれました。日本糖質制限医療推進協会の提携医療機関を受診しているメリットですね。

SGLT2阻害薬の効果

最初の実験(2018.5)

糖尿病発覚後半年時点で初めて、使用してみました。

そのころの通常は、
1時間値(概ねピーク):糖質1gあたり血糖値3の上昇
2時間値:血糖値が180近くまで上がると2時間値は目標値(140)を超える
でした。

糖質約40gの摂取で、
1時間後  218
1.5時間後 173
2時間後  108

このころ、空腹時血糖値が120前後でしたので、108という数字は驚異的でした。1時間値が218なら、1.5時間値が190、2時間値が160程度が想定される数値です。

食後高血糖を防ぐのではなく高血糖になったら血糖値を下げる薬 との印象でした。

最近の比較(2019.3-5)

3月のハワイ旅行と、5月連休で大量の糖質摂取を行いました。ハワイではジャディアンス服用、5月連休はジャディアンスなしです。

SGLT2薬ありSGLT2 薬なし
ラーメンパスタくら寿司サイゼリアカツ丼
80g90g100g90g80g
1時間値119104121127164
2時間値138121120159183
3時間値129136152150156
4時間値111138128135

結果についてこれだけのサンプルでは何とも言えませんし、ジャディアンス有のハワイ旅行では、食事前の運動量が多くその影響もあり得ます。

わたしなりに推測するのは、2時間値、3時間値、4時間値の違いで、ジャディアンス有の方が血糖値が下がるのではないか、それは尿として糖が排出される効果ではないか、と考えます。

もしそうであれば、糖の排出により、血糖値を下げるとともに、食事によるインスリンの分泌を少なくする効果あり、と考えられます。

空腹時血糖値への効果

初めてジャディアンスを飲んだ翌朝は、血糖値が102でした。
その頃の朝の血糖値は120前後が普通で、ほとんど見たことのない数字の驚きました。

昨年12月、今年3月、今年6月にジャディアンスを使用した翌日はいずれも90台でした。これもまず見ない数字なので驚きました。

SGLT2阻害薬による糖の排出は、食後だけではないとのことですが、まさにその通りです。
起床時血糖値が薬を飲まなかったら110で、飲んだら95だったとして、それが合併症予防や体の健康に効果があることなのかはよくわかりません。
血糖測定器の数字を見た瞬間ちょっといい気分になるのは確かです。

ただ、この起床時血糖値抑制効果、ずっとは続かないようです。私は5日程度連続してジャディアンスを飲みますが、最後のころはいつも通りの血糖値(110前後)に戻ります。
この意味もわかりませんが、継続すると薬の効きが悪くなる、糖質をとる生活を数日続けると膵臓の負荷も大きくなり血糖コントロールが悪くなる、などいろいろ考えられます。
ジャディアンスを飲んでいるからといって、必要以上に糖質を取らないことが糖尿病対処にはよさそうです。

まとめ

江部先生は、糖質を多くとるときだけ、α(アルファ)-グルコシターゼ阻害薬剤(α-GI薬)を勧めていらっしゃいます。

私は、α(アルファ)-グルコシターゼ阻害薬剤(α-GI薬)は飲んだことがありません。
素直に江部先生のおすすめのお薬を使うのも一つの方法かと思います。

私は、今のとこSGLT2阻害薬で血糖コントロールできていて、数日間の連続使用のパターンにも慣れてきた(今のところ副作用は出ていない)こともあり、当面は頓服はSGLT2阻害薬にするつもりです。

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