糖質制限で老化-マウスの実験 テレ朝羽鳥モーニングショー

ゴールデンウィークののんびりした朝食を楽しんでたらまたやっていました。
東北大学農学部都築准教授のマウスの実験。
コメンテーターの玉川さんが東北大学まで出かけて都築准教授にインタビューしていました。

実験の概要

(ご存知の方も多いと思うので、その場合は読み飛ばしてください。)
マウスを20匹ずつのグループに分け、一方には脂質、糖質、タンパク質のバランスが日本食に近い「通常食」、もう片方には、炭水化物を脂質とタンパク質に置き換えた「糖質制限食」を与えたところ、通常食のマウスは多くが平均寿命より長生きしたが、糖質制限食では平均寿命まで生きられなかった個体が多く、それらは平均寿命より20〜25%短命だった。また、老化の進度にも顕著な差があり、糖質制限食の個体は背骨の曲がりや脱毛などがひどく、通常食に比べて30%も早く老化が進んだ。加えて、糖質制限食では学習能力の低下も見られた。

TVでのインタビュー

(記憶で要約しているので正確ではありません。念のため)
青がインタビューの要約、緑が私の感想です

玉川:糖質を多く取ったほうが病気の発生など健康に良くないという研究もあるが
   (テロップで、コホート研究とはという解説が簡単にされていました)
都築:それは糖質を多くとりすぎた場合。多くとりすぎが悪いということが、取らないことが安全ということにはならない
←確かのその通り。筋が通っている(論理的)
玉川:ヒトとネズミでは違うということはないのか?
都築:人で実験することはできない。犬がある食べ物を食べて死んだときに、ヒトには当てはまらない、ではなく、危険の可能性があるということではないか
←これも筋が通っている(論理的)
ヒトとネズミ、他の多くの動物で、党、たんぱく、脂質の代謝のメカニズムは同じ。
←えー、そうなの?
玉川:ではどうすればよいのか
都築:極端にならずバランスを取ること
←そういうことか。言いたいことが分かった。
玉川:どのようなバランスがよいのか
1975年当時の日本人の食事は「健康有益性」が高い。ヒトでもネズミでもそのデータがある(研究されている)
都築:今の食事は比べてお米の摂取量が多い...
やっぱりそこか、、

江部先生の見解(ブログ)

江部先生はブログで以下のように書いています。

「そもそもマウスの食事実験の結果はヒトには当てはまらない。」
という基本的なことをご存じないようです。
どんな研究でも手軽なので、マウスやラットが実験動物として使われやすいです。
しかし、マウスやラットで糖質制限食(高蛋白・高脂肪食)の実験をすること自体が、
根本的な間違いです。
なぜなら、マウスやラットなどネズミ類は、
本来の主食は草の種子(即ち今の穀物)です。

実験マウスの食事とは-ネット情報

糖質制限肯定でも否定でもないニュートラルな情報がないか探してみました。
ハムスターやマウスのペットの飼育の仕方でエサのに関する情報を検索しました。
ハムスターに関する情報はある程度ありましたが、マウスに関する情報はありませんでした。
こんな情報がありました。
マウス・ラットなど実験動物用のエサ(ペレット)に関する情報です。

長期飼育用  飼育用  繁殖用
粗蛋白質   16.5%   23.1%   27.5%
粗脂質        3.9%    5.1%     4.6%
粗繊維        4.4%    2.8%     4.4%
粗灰分        5.9%    5.8%     7.4%
カルシウム 1.02%  1.07%   1.38%
リン          0.79%  0.83%   1.08%

妊娠しているときとか、成長期にはタンパク質がより必要で成長した後は蛋白質の比率は少ないほうが実験動物の長生きには良いようです。
炭水化物は70~80%というところでしょうか。
(粗灰分というのが、食品を高温で焼いた時に灰として残る成分 だそうです。)
人間の食事よりさらに高炭水化物食がよいとされているようです。

成長期と成長してからの栄養バランスをわけるなど、細かく管理して飼育されているわけですね。
(人間と違って寿命も2年程度と短く、実験も可能なので、長期飼育に最適なバランスが明らかになっているのでしょう)

研究背景の憶測

今回の実験での糖質制限は、TVでは糖質10数%と言っていました。(スーパー糖質制限+アルファ程度です)

実験マウスのエサについて知っている研究者であれば、十数%の糖質を与えたマウスがどうなるか、仮説を立てることは容易であろうと思います。

このような実験は時間もかかります。実験やデータ取りは研究室の学生、大学院生がやってくれるのでしょうが、コストもかかります。
実験を行う研究の場合、スポンサーが必要になります。
この教授はどんなところから研究資金を得ているのだろうかと検索してみると、いくつか出てきました。

公益財団法人 タカノ農芸化学研究助成財団
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
東和食品研究振興会(東洋水産創業者が出資)

研究するのにスポンサーからお金を獲得しないと研究がなかなかできないとなると、研究者も大変ですね。

この方が委員(委員だけで60名を超える大規模です)に名を連ねている大きな国際会議の開催趣旨書には

本来ならば学会の助成金と参加費ですべてを賄うべきでありますが、助成金と参加費からでは限度があり、経費の相当額を諸団体及び諸企業からのご浄財に頼らざるを得ないのが実情でございます。つきましては、誠に恐縮でございますが、、、、

とありました。企業などから寄付が当然になっているんですね。
国内外から2000人以上が集まる大きな国際会議で予算の総額はなんと1億3200万円です。すごい金額です。学会費だけではとてもまかなえる金額ではないでしょう。
広告掲載料、機器展示出展料、共済事業、いろいろな名目で企業などから資金を集めるようです。企業側委員の所属先は大手食品会社の名前が並んでいます。

研究業界と企業業界がうまく連携をしている領域なのでしょう。

大学の研究者は、論文を一定以上出し業績を上げることが必要で、文部科学省からもフォローされるようです。(昔よりかなり厳しい、と知り合いの大学教授がこぼしていました)
准教授から教授になろうとするのであれが、多くの研究実績が必要です。
実験をするには費用がかかりますから、研究するのはスポンサーからお金を出してもらうことが必要です。スポンサー(の意向)を尊重することは研究者として実績を積むのにとても重要なことだと思われます。

科学的研究は、一般に仮説検証です。
糖質制限が健康に良いか調べる、では仮説になりません。
糖質制限が健康に悪いことを検証する、なら仮説になります。

研究助成金等の審査では、研究の意義、仮説の妥当性、検証できる可能性などが審査されます。なるほどこの仮説を検証することが有意義である、かつそれが検証できそうだ、となってスポンサーからお金がいただけることになります。
(スポンサーがお金を出すからこういう研究をしてください、と最初から依頼することもあるのかもしれませんが)

最初から結論ありきの研究なのではないか、という妄想がわいてしまいます。

この先生は「和食」が研究テーマのようです。
食品業界とか農業関連の団体、組織と密接に連携されているのではないでしょうか。

糖質10数%でどうなるのか、は他になかなかない研究ですからそういう意味では意義深いですね。
どうして糖質10数%なのでしょうか。5%でも25%でもよいように思いますが。
スーパー糖質制限制限狙い撃ち、という気もします。

糖質制限を否定する論調は、長期的安全性に絞られてきているようにも感じます。
短期的に血糖コントロールとしても、原料という意味でのダイエットにしても、中性脂肪、高血圧などの改善にしても
もはや否定できなくなりつつあるから、という気もしています。
断末魔なのでしょうか、それとも一発逆転があるのか、他人事だったら面白がれるところです。

せっかくのゴールデンウィークの休日につまらないことに時間を使ってしまいました。

コメント

  1. neko より:

    アメリカでもコカコーラがスポンサーで。。。とか、皆そんな感じみたいですね。
    「甘くない砂糖の話」というドキュメンタリーだったか、私も色々聞いたことがあります。
    世の中、眉唾の情報ばかりで、気をつけてないと足をすくわれますね。
    参考になる記事、ありがとうございます。

    • ホリデー より:

      論文とか研究と言われると、真理を追究することを目的にしている、と思いがちですが、どうやらそうでないことが多いようです。
      自分に都合の良い主張をするための方便に使われていることもある、というか世の中そういうこともある、と冷めた目でみることも時に必要だと思います。
      記事の中に書き忘れましたが、この先生、「和食」が研究テーマだそうで、今回のような研究をいくつかすれば、農業・食品などの業界でもてはやされるでしょうね。

      このような主張は何度も繰り返されると、だんだん真実のように扱われるのが怖いところだとも思います。