糖尿病患者が医療に求めるエビデンス

EBM(エビデンス・ベースト・メディスン)について考えてみました。江部先生のブログにもよくこの言葉が出てきます。コトバンクには「その医師の経験や主観だけではなく、根拠のあるデータに基づいて医療を行なおう、という取り組み」とあります。
江部先生のブログでは

医学界において、evidence(エビデンス、証拠、根拠)となるのは、基本的に医学雑誌に掲載された論文です。

と説明されています。。こんな記事もありました。

ターザン、2018年4月12日号(No.738、p47~p51)に山田悟医師と私の対談が掲載されました。
(中略)
山田医師の「ロカボ」と高雄病院の「スーパー糖質制限食」「スタンダード糖質制限食」「プチ糖質制限食」も対立するものではなく、お互いに相補的なものという位置付けです。このように対談はかみあったのですが、一点だけ、エビデンス(EBM)に関しては、見解の相違がありました。山田悟医師は、EBMを大変重視しておられ、医学界においてはエビデンスがないと医療は語れないという立場です。つまり根拠となる医学論文がないと信頼できないという見解です。

権威のある雑誌に掲載された学術論文を根拠とするのは学者としては正しい態度であろうと思います。
患者としては、論文ではなく自分が受けている治療の根拠、実績、治癒の可能性を示して欲しいです。

エビデンスレベルの高い論文からは、A治療法よりB治療法の効果が高いあるいは危険性が低いという何らかの証拠が出るのでしょう。
だから今目の前の患者にはA治療法が効果的なはず、ということになります。
そういうアプローチもあるのでしょうが、糖尿病患者は学術論文からの推測でなく、今行っている治療の過去の実績を出してもらって治療法を選択したいのです。

私の場合であれば、糖尿病と診断を受けた時点で随時血糖値308、HbA1c9.6だったのですが、従来のカロリー制限+投薬+運動でどのような経過をたどるのか、確率で示してもらえるとその治療を受けるかどうかよりわかりやすく納得もできたと思います。
例えば1年後に
・インスリン注射でHbA1c7未満(=合併症のリスク小)となっている確率
・飲み薬のみでHbA1c7未満(=合併症のリスク小)となっている確率
・飲み薬なしでHbA1c7未満(=合併症のリスク小)となっている確率
・治療を継続できていない確率(嫌になって治療を受けなくなった)
などについて示してもらえると、日本糖尿病学会の糖尿病治療の効果について自分の選択のための根拠となります。糖質制限医療推進協議会でも同様なデータを示してくれるとそれぞれの治療効果の違いがはっきりして分かりやすいと思います。データを客観的に比較して優劣をつけることは現実には難しいことでしょうが、患者が欲しいのはこのようなデータです。

学術論文のエビデンスより、治療実績を公表してくれるだけでよいのです。

このようなデータはその気になれば示すことができるはずですし、医療が患者本位であるなら当然示した方がよいデータだと思います。

日本糖尿病学会の糖尿病治療を行っていた場合には、飲み薬なしでHbA1c7未満の達成することはまれなのではないかと思っています。
数字を見たことはないのでわかりませんが、一つの傍証としてカロリー制限と運動で自らの糖尿病治療を行った医師の書いた「糖尿病は薬なしで治せる」という書籍がロングセラーになっている(2004年発行、2017年31版)ことからも、これがきわめて珍しい例であることが推測できます。

糖質制限で糖尿病治療に取り組めば、薬なしでHbA1c7未満というのは例外を除いた多数の場合に達成されるのではないかと思われます。
私の場合は4か月で6.1、更に改善を図ろうとしています。

合併症についても、どんな場合に合併症が出るのか、合併症が出た実績のデータを医学の専門家でない患者がわかるようなデータで示してくれると、患者自らの治療方針選択の道しるべになるのではないでしょうか。

日本糖尿病学会は糖質制限の長期的安全性に対して疑問を示しているようです。確かに糖質制限の長期の学術的エビデンスはまだ十分とはいえないのでしょう。
しかし今糖尿病に対処している糖尿病患者は、

カロリー制限+薬(インスリン注射も含めて)によりどれだけ合併症が防げているのか

そのデータが知りたいのです。
合併症の発生確率の実績は大規模な実験などしなくてもその気になればデータを取れるはずです。

2型糖尿病の治療は食事と運動が基本です。薬は血糖値を下げる対処にしかなりません。データの公開を含めて患者の自主的な選択と治療への取り組みを促進する働きかけが医療の行うべきことなのではないでしょうか。

糖質制限で糖尿病治療の効果が上がり、日本糖尿病学会の糖尿病治療があまり有効でないことはネット情報の中では”常識”に近くなっているように思えます。一方で現実社会では、糖質制限による糖尿病治療は市民権を得ておらず、得体のしれない民間療法として否定されているようにも思えます。この状況が変わってほしいと思いますが、そのためには糖尿病治療に最も影響力が大きい専門家集団である日本糖尿病学会がそのカギを握っていると思います。

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