プラントベースホールフーズの食事法か糖質制限か

Kさん(このブログにコメントをいただいたときはくるくるさん)のブログで、プラントベースホールフーズの食事法の糖尿病治療への効果の論文が紹介されています。
プラントベースダイエットによる2型糖尿病の予防と治療

同じ論文について、江部先生のブログで読者から質問があり、江部先生が答えています。

質問

最近PBHFという聞きなれないものを耳にしたのですが、
それが下記の論文を根拠にしているようでして、
翻訳版で少し見てみたのですが、如何にも怪しげな研究結果を繋ぎ合わせたようなもののように感じます。
特に5.3炭水化物の項では、「たんぱく質を犠牲にして炭水化物を摂取した方が糖尿病リスクを低下させる可能性がある」との結論まであり余りにも内容です。
しかしながら論文という形で存在しているが故にこれを信じてしまう方々が増えてしまうのはどうしたものかと。。。

 

江部先生の回答

昔からある、全粒粉ベースの食事ですね。
まあ、精製炭水化物よりはましと思いますが、
所詮、糖質制限食の効果に比べれば、はるかに劣ります。

 

さて、どう考えればいいんでしょうね。
江部先生は一刀両断ですが。

私はこれまで糖尿病について学んだこととして

ひとつの論文や同一人の論文だけでは、そういう主張もある、程度に理解したほうが良さそう。
糖尿病患者のブログの本人の状況は信じられる(ことが多そう)-ただし自分にあてはまるとは限らない

です。

さらに、カロリー制限も糖質制限も糖尿病が改善した人もいれば改善しない人もいる。
*ただ、どの程度の比率でよくなるのか、悪くなるのかのデータは医師や学会からは出てこない

そこで、

プラントベースホールフーズの食事法 を その論文だけで多くに人に効果があるとは信じられません。

Kさんなど、実際その方法を行っている人の改善の状況には注目しています。それは真実だと思うからです。効果があり納得できれば自分ができそうであれば行うかもしれません。

結局、自分で決めるしかありません

もう一つ重要なのは、何をめざしているのか、ですね。

私は、もう少し自分の状況が改善すれば(空腹時血糖値が下がり耐糖能が少し改善すれば)、生活上それほど困らないので、このまま糖質制限を続ける生活でよい、と思っています。結構快適ですし食事もおいしいし面倒でもなくなったし。(おからパウダーには困ってますが)だから、プラントベースホールフーズの食事法に、完治という点では魅力を感じるもののそれをずっと継続しようとする気にならないので、自分の方法として今行う気にならない、ということです。

糖尿病治療の視点に加えて食事スタイルの価値観です。価値観に正解はありません。どのような人生を送りたいか、という話です。(QOLとは本来そういう意味だと思います。医者が勝手に患者のQOLを決めてはいけません)だから、あえて正解があるとしたら、人それぞれの価値観が正しい、が正解なのではないでしょうか。

価値観だからこそ、お前のやり方はおかしい、とか信じられない、とか、あるいは揶揄するような文章を見ると不快に感するのではないでしょうか。

糖尿病治療の食事法もやり方はいろいろ、しかし医療者は自分の信じる方法が正しいと主張しがち、ますますそう思うようになってきました。

コメント

  1. ろんり~うるふ より:

    ホリデーさんおはようございます。
    自分も、結局、自分で決めて、何を目指しているのかだと思いますね。
    自分の場合は、ネックがパニック障害。
    完治は諦めた口ですが、社会生活出来るまで回復出来れば十分です。
    ベストを求めていたら、一生が終わってしまいます。
    ベターなところに辿り着けば、もう言う事は無いです。
    「目指せ7割」って感じです。6割でも十分です。

    • ホリデー より:

      ろんり~うるふさん
      うるふさんは、糖尿病に加えてパニック障害にも対処されているんですね。パニック障害も行動療法など治療法はあるのでしょうが完治は難しいのでしょうね。ちょっとしかない知識で知ったかぶりして書いてます。すみません。
      うるふさんは、それもあって、心穏やかで、誰のどんなやり方も応援されるんでしょうね。暖かいなあと感じています。

      「目指せ7割」ですか。完璧を目指すと力が入りすぎますものね。
      私は、困ったときほど、自分ができる一歩前進、を官あげて実行するようにしています。
      糖尿病で糖質制限を始めたのも、それが良いと確信をもっていたわけではなく、まずはやってみよう、でしたし。
      うまくいけば続ける、うまくいかなければ別のことをやってみる、です。

      糖尿病のほうは、私から見れば糖質1gで血糖値上昇1なら、ほぼ寛解してるじゃん!とうらやましく思っています。
      どんな工夫をされてきたのか、いつか教えてください。

  2. K より:

    切って捨てられましたか・・・悲しくて泣けますね。
    今訳してる論文も、大きな大学病院の立場のある医師がまとめているもので
    記述にはすべて基となる引用文献が提示されています。
    しかし、統計はあくまで統計であり、個々の人には100%当てはまらないのも事実。
    私が糖質制限で体調おかしくしたのも事実。糖質制限時の健診ではLDLが150もありました。
    (今年9月の検査では110です。)
    そして、PBWFは昔ながらの玄米菜食とは違うものです。

    私のブログの中で、PBWFによる糖尿病治療を個人指導してくれる組織のサイトがあって、ライザップか宗教みたいな雰囲気にも見えるかもしれませんが、すでに3000人以上が参加して、現在満員で、希望者はウェイティングリストに登録しなければならない現状です。
    このサイトに載せられてる、参加者たちの声は、ねつ造でなく本当の声だと信じてます。

    https://www.masteringdiabetes.org/success/

    みんな人生かかってるから一生懸命なんです。
    自分のやり方と違うからって、鼻で笑うようなことを言う医師を
    私は信頼しません。

    • ホリデー より:

      江部先生は、論文についてどう思うかと読者から聞かれて自分の考えを表明されただけですから、「鼻で笑うようなことを言う」ことをされたのではないと思います。

      このコメントでKさんが大変お腹立ちのように感じましたが、「一刀両断」という私の表現が影響しているように思い、私はそのことを申し訳なく感じていることをお伝えしてこうと思いました。

  3. コハかあちゃん より:

    こんにちはホリデーさん

    記事と違う内容でお邪魔します。
    おKAら粉は微粉末が良いのですか?
    粗挽きはどうでしょうか?

    脂質制限・PBWF ・筋トレ気になって調べたりしていました。
    とても参考になっております。

    • ホリデー より:

      コハかあちゃんさん
      おからパウダーですが、微粉末と粗挽き、違いが私にはわかっていません。
      おから蒸しパンに使っているだけなので。
      お役にたてずすみません。

  4. コハかあちゃん より:

    あ、先程は単刀直入すぎるコメントで申し訳ありません。

    奥様が蒸しパンを作る時に使用されているのは微粉末ですか?
    もし、粗挽きでもよろしければkikuyuさんで数量限定ですが有るようです。
    「お菓子材料 キクヤ 通販」で検索するとでてきます。私が低糖質パンを焼くためにアーモンドパウダー他を購入した事のあるお店です。このご時世に値上げせず良心的です。

    近所のおばちゃん相手の会話ではあるまいし、微粉末と粗挽きどっちが良い〜?ではしょうもない文章ですね。違いをお聞きしたかったのでは無くホリデーさん宅で使ってる粉に関してでした。あわてんぼうのおばはんで自分であきれてます。笑

    • ホリデー より:

      コハかあちゃんさん
      文章でお互いにじゅうぬんに理解できないことはよくあることですので、気になさらないでください。

      それより、貴重な情報ありがとうございました。調べてみます。

  5. しらねのぞるば より:

    【法四依】の教え

    Plant-Based Foodについて述べる前に,まず私の情報選択基準について説明させてください.

    私の実家近くには寺があり,そこの住職は,丁度 今のキリスト教の教会のように,日曜日に近所の子供たちを集めて,仏教説話を面白おかしく話してくれていました.私もよく通っていました. その法話の中に「法四依」(ほうしえ)というものがあり,そのうちの2つ;

    [依智不依識]
    智に依りて識に依らず
    =何が正しいかをよく考えて,聞きかじりの知識に振り回されない

    [依法不依人]
    法に依りて人に依らず
    =権威のある人の言うことだからと鵜呑みにせず,真理かどうかを考える
    (「法」は法律のことではなく、ここでは「仏法」=すなわち「真理」)

    子供向けの説明なので,この解釈であっているかどうか不明ですが,今に至るも強く印象に残っています.

    では,自分の糖尿病克服において何を信ずるべきなのか,信じられる順番について考えてみますと,

    【1】自分のデータが圧倒的に信頼性が高い

    自分の体で取ったデータなのですから,それが世間一般に言われていることや,医学論文と違っていても,こちらの方が正しいと考えます.

    よく経験するのは,「2型糖尿病では1gの糖質で血糖値が3mg/dl上がる」と言われていますが,それは多くの人の平均値に過ぎません.2の人も5の人もいるでしょう. また同じ人が同じものを食べても日によっては3だったり4だったりします. しかし測定器が壊れていたのでない限り,自分で測定したデータこそが,自分にとってもっとも信頼性のおけるデータなのです. 同様に,これをやったら(食べたら)こんなに良くなった,というのも自分ではそうならなければ,自分のデータを信じます.

    【2】次いで医学文献で報告されている「事実」の部分

    加工された情報ではなく,元となった未加工のDataは信ずる,ということです.

    医学論文では,試験・実験を行い,その測定値を統計解析した結果がまとめられていますが,信ずるべきなのは,考察・結論の部分ではなくて,生データの部分,つまり事実のみです.生データまでバルサルタン(ディオバン)事件のように改竄されていたらどうしようもありませんが,それはめったにないだろうと,一応信じることにしています.

    文献の結論をそのままでは信用しないのは,以下の理由です.

    A,B,Cの3薬の薬効比較試験で,Aが優れて有効であったと結論に書かれている臨床報告があったとします. しかし,試験に参加した被験者全員が一人残らずAが有効だったという例はみたことがありません. 生データが開示されている場合に限られますが,原文を見ると,たしかにAが有効だった人が最多数だった(=だから【統計的には】Aが有効という結論)としても 少数だがAよりもB,Cが著効した人もいる.中にはAでかえって悪化した人もいる場合さえあります.

    では,このデータをみて,「自分にはAが必ず効く」と断言できるでしょうか? 自分はAでは悪化してB,Cが著効したケースにあたるのかもしれません. 医師がこの論文を読んで,第一選択薬としてAを処方するのはやむを得ないでしょう.確率に頼って治療するしかないからです.しかし論文を正しく読んでいる医師ならば,ほとんどの人に有効であったAが,どうしてBやCが効いた人には有効でなかったのか,その原因を別の論文で探して,Aが適しない人にAを投与していしまうのを避けようとするでしょう.それが本当のEBMです.

    Dataは「事実」ですから曲げられませんが,論文本文での「主張」は自由です.

    多くの人が(専門家でも)『医学論文にこれこれのことが書いてあった』という場合,そのほとんどはAbstractとConclusionしか見ていません.極端な例では自分は論文を読んでいないのに,他の人の言うことを受け売りして,『あの論文にはこう書いてある(らしい)』という人すらいます.もちろん()内は口にしません.多忙なこともあり,原文全文まで読む医者はきわめて稀なのです.せいぜい製薬会社のMRが持ってくる抄録翻訳に目を通すくらいでしょう.まして,Dataまで詳細に吟味する人はほとんどいません.例外は『北品川藤クリニック院長のブログ』(旧 六号通り診療所所長のブログ)の石原先生などごく一部です.

    https://rokushin.blog.so-net.ne.jp/

    どんなに話題になった論文でも,その臨床的意義を評価するのは 医者でも困難だと医師自身が語っています.

    「医療記事は鵜呑みにしてはいけない」 2018/10/25 日経ビジネス
    https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/102400047/?i_cid=nbpnbo_tp

    以上が私の信頼する情報です. そして3,4がなくて5番目くらいに;

    【5】他人の実例
    『私はこれで「完治」又は「寛解」した』という人の話.「その人限定の事実」であったと理解するにとどめています.参考にはしますが,鵜呑みにはしません.ご本人の結論はそれはそれとして尊重しますが,ブログには自分のアピールしたいこと、つまり「主張」しか書いてないことが多いからです.

    そこで上記の【2】の方針のもとに,私がPlant-Based Foodの文献を読んで考えた結果を次のコメントに記します. 長文連投でごめんなさい.

  6. しらねのぞるば より:

    Plant-Based (Whole) Food( = 以下PBF)について,調べてみました.
    この分野では 以下のお二人がブログなどでよく取り上げられているようです.

    New York大学医学部准教授 Michelle McMacken
    George Washington大学医学部准教授 Neal Barnard

    そこで,まずBarnard医師の論文を探してみたことろ;

    A Plant-Based High-Carbohydrate, Low-Fat Diet in Overweight Individuals in a 16-Week Randomized Clinical Trial: The Role of Carbohydrates

    Nutrients 2018, 10, 1302; doi:10.3390/nu10091302
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30223451

    調べた限りではこれが Bernard准教授の最新論文です.しかもレビューではなく,臨床試験.
    今回はこの論文を徹底的に読み解いてみました.

    私はいつも医学論文を読むときには,この試験の被験者全員に集まってもらったら,どんな光景なのだろうと想像することにしています.
    Baselineの数字だけではイメージできない姿が浮かぶからです.

    この試験の場合は被験者の9割は女性で,平均年齢53歳,BMIは28-40.身長が不記載ですが,平均1.65mとしても,80-100kg級です.日本だったらめったに見かけることのない高度肥満女性です.集まってもらうと75名,壮観です. もし シニア女子相撲部の部室というものがあれば,そういう情景. これでイメージがつかめました.

    被験者を2群に分けて,一方(普通食群)はそれまでの自分の食事・日常生活を何も変えずに,他方(PBF群)は食事から動物性のものを避けて,かつ低脂質の植物性食を摂るように指示され(ただしカロリー制限は不要),更に医師・登録栄養士(=日本の管理栄養士に相当)・調理師による講義を受講させた.更にPBF群は毎週1hr.の食事教室も受講[16週なので合計16回]. 被験者は自分がどちらの群に属すのか知らされた. 以上の試験を16週にわたり実施.

    高脂血・高血圧・甲状腺機能の薬を服用している人12-24%含まれていますが,糖尿病と診断されている人は最初から除外されているようです.
    また,通常この種の試験では,被験者の血清プロファイル[コレステロール,血糖値など]を試験前後に測定するのが普通ですが,記載はありません.学術論文では,[何を記載しているのか]と同じくらい,[何を記載していないのか]も重要な情報です.

    ハリス・ベネディクト方程式(改良版)での基礎代謝は,体重80kgで1470kcal,100kgで1653kcal.

    この試験前後の平均摂取カロリー[食事記録表による自己申告]を見ると,

    普通食群は 1920→1580kcal
    一方 PBF群は1850→1450kcal

    米国の『普通の食事』を見てきたばかりの私からすれば,本当だろうかと思うほどの低カロリー
    特にPBF群は どの体重でも基礎代謝エネルギーすらカバーできなくなっています.
    普通食群は食事生活を変える必要はないと,またPBF群はカロリー制限はしなくていいと,言われていたにもかかわらず,両群とも申告カロリーが大幅に低下しています.
    私がこんな食事を続けたら,すぐにガリガリに痩せてしまいます.

    『高糖質のPBF食だからインスリン抵抗性が改善した』のではなく,体格に比べて著しい低カロリー食を続けたので,体重が減り,その結果としてインスリン抵抗性も改善された,と読みました.これなら当たり前です.

    ただこの論文のいいところは,被験者が75名と少ないので,集計データではなく,個々のデータが示されていることです.
    炭水化物・食物繊維の摂取増減量・率を横軸として,各種指標の変化を見たグラフ(Fig.3 A-L)において,炭水化物・食物繊維が増えるほどすべての指標がよくなっており,相関性・信頼性ありという判定ですが,グラフをよく見ると,総人数が小さいので,非常に優秀な結果の4-5名に引っ張られていることがわかります.

    この特に優秀な4-5名のSpotをグラフから隠しただけで,残りのデータは全体の相関性が怪しくなるほど大きくばらついています. つまりこの論文の結論はわずか数名で決定づけられているのです.PBF群の中でも,特にWholeGrainを摂るのに熱心だった人が,(上限は設定されていませんから)多量の炭水化物と食物繊維を摂り,たまたまよく運動する人だったとしたら,この結果は説明できてしまいます. これほどの小集団データでは,偶然に振られやすいのです.

    私なら この人達が16週間の間に どういう運動量だったのかを詳しくHearingします(というか,全員の 運動量と減量結果をPlotしたグラフも別途作るのが普通でしょう, ここでも『書かれていないこと』が重要です). なぜなら被験者の期間中のPhysical Activitiyには3倍近い開きがあったからです. 肥満者ばかり集められて,これから16週間の体重変化を調べますと言われれば,減量競争を勝ち抜こうとしてせっせと運動する人も出てくるでしょう.特にPBF群の人だけには,何度も『自然の植物性食品だけを摂ってください』と繰り返して講義されるわけですから,なおさらです.「今まで減量に失敗してきたが,今度こそこれで痩せられるかも」という被験者自身に由来するバイアスが出る可能性があります.

    しかし,以上のような詳細は,新聞・雑誌記事になっても いっさい報道されません. 【植物由来主体の高糖質食をとったらインスリン抵抗性が改善された】 と,論文の結論を転記するだけです.[高度肥満の女性では]という前提条件すら記載されないでしょう.運動量に3倍の開きがあったという背景も消えます. 原文にまであたって裏をとる記者などいないからです.生データを詳細に見た結果と,新聞記事の見出しとでは,まるで印象が異なりますね.著者も[試験の結論]だけを著書に書くでしょうから,読者にはその「主張」しか与えられません.

    なお,何かをアピールしている論文を読んだ場合,私は努めて それと正反対の主張をしている論文を探して比較します.この場合は下記の論文がほぼ該当しました.

    The Effect of a Plant-Based Low-Carbohydrate (“Eco-Atkins”) Diet on Body Weight and Blood Lipid Concentrations in Hyperlipidemic Subjects
    ARCH INTERN MED/VOL 169 (NO. 11), JUNE 8, 2009
    https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/415074

    低糖質食(27%)で,さらに脂質・蛋白質をできるだけPlant-Basedにしたらどうなのか,という結果です.比較対象は58%高糖質のLacto-ovo vegetarian(肉・鶏・魚は食べないが,酪製品だけは許容する).

    こちらは詳述しませんが,年齢層・肥満程度も同じくらい,但し男女比はほぼ半々.試験開始時に血圧や血液検査もきちんとしています. 2割くらいの人が高脂血・高血圧・甲状腺機能薬を服用していて,空腹時血糖値は正常,糖尿病薬服用者はなしという点は同じ.

    結果は27%の低糖質PBF食の群と,58%高糖質Lacto-ovo vegetarianの人とで体重減少に差がなし(どちらも4週で-5%の体重低下. Barnard論文のPBF群は16週で-6%).インスリン抵抗性HOMA-IRは,どちらの群もPlant-Based食なのに,改善も悪化もしていないので,Barnard論文とは異なる結果です[★]. ただし 試験前後でのLDLの低下量,nonHDLコレステロール低下幅は,低糖質の方が有意に大きかった.

    [★] Barnard論文の Fig.3 Fのグラフで,やはり特に優秀な人4-5名を除くと,インスリン抵抗性は炭水化物摂取比率に対して ほぼFlat,つまり2つの論文の結果がかなり似通ってきます.

    いかがでしょうか? 同じような試験を行ったのに,これほど違うのです.一人の医学者,一本の論文だけに依ることは危険だと考えます.

    自然食を心がけてよく体を動かせば,ある程度の効果はある.これはたしかでしょう. しかし食事療法の常として,癌の特効薬のようなめざましい効果があるわけではない. 作用機序のはっきりしている薬ですら,効く人/効かない人/不幸にもかえって悪化する人があるように,ここで提案されているPBFも個人差は大きいのです.

    この論文の著者 Banard准教授の名誉のために言えば,著者は決して針小棒大に記述しているわけではありません.全被験者の個別Dataまで開示しているのですから,むしろ非常にFairです.

    PBFは宗教でもインチキでもありません. ただPBFにせよ他の食事療法にせよ,その効果はおおむねこんなものなのです.むしろ読む方の問題だと申せましょう.論文には「こういう前提条件のもとではこれこれの有意差があった」と書いてあるだけなのに,『すごい方法が発見された. これで糖尿病が必ず良くなる(治る)』と思ってしまうのは,願望で結論を膨らませてしまった結果です.論文著者に責任はありません.

    最後に再び 女子相撲部の部室に戻って考えると,はて この人達に有効だったというPBF,果たして自分にもあてはまるのだろうか? それを考えるのは自分です.

    依智不依識
    依法不依人

    私には法四依の教えが至当に響きます.

    ここまで読んでくださった方,まことにお疲れ様でした.

  7. モン吉 より:

    ホリデーさん、こんにちは

    プラントベースホールフードでもし糖尿病が完治するなら、素晴らしいですね。
    ただどのようメカニズムで糖尿病が良くなり、完治するのかが、私には分りません。
    以前も書込みしましたが、人にもよりますが糖尿病を発症した時点で、膵臓のβ細胞が30~50%死滅していると云われています。
    糖質制限にしろプラントベースホールフードにしろ筋トレにしろ50パーセント死滅したβ細胞が元通り100%に復活する事は無いと思いますので、糖尿病完治は無いと思っています。
    しかしβ細胞が死滅せず疲弊しているだけなら、それぞれの方法により、機能が100%に復活する事はあり得ると思いますので、完治はある思います。

    プラントベースホールフードは、例えば糖質制限と同じように血糖値を上げないのでしょうか?  それなら糖質制限食をしているのと同じですし。
    又、血糖値は上がるが糖尿病のSU剤と同じように、β細胞を刺激する作用があり疲弊したβ細胞を無理やり働かせたり、50%しかないβ細胞を無理やり働かせてインスリンを出させるなら、やがてはβ細胞は死滅する事にならないかとの不安があります。
    取り入れるには、詳しいメカニズムが知りたいですね。
    糖質制限であれば、血糖値を上げるのは糖質だけだから、それを摂らなければ血糖値は上がらず、β細胞は必死でインスリンを出す必要もなく、結果HbA1cは良くなり、糖尿病が良くなるのは分りますので。

    又、β細胞は増殖できるから元通りになるという説もあるようですが、どの臓器や体の部分にしても失った細胞を増殖出来るのは、5~10%位と何かに書かれていたように思います。
    極端な話になりますが、切断した指は修復機能により、細胞が増殖し傷口はキレイになりますが、元の指の形には戻りません。胃の手術で半分に切った胃の傷口は細胞の増殖でキレイになるでしょうが、それぞれの食事療法や筋トレで元の大きさに戻る事は無いと思います。
    人のDNAは成人して一定の大きさになれば、もう指令を出さないので、それ以上大きくなりません。ですから30~50%失ったものが、それぞれの方法で元通り100%になるとは思えません。
    そういう意味で完治は無いと思っています。
    出来るとすれば、山中教授のips細胞しかないと思います。

    • ホリデー より:

      メカニズムは、私にもわかりませんね。
      ただ、良くなりつつある人がいるのは事実の様なので注目はしています。
      インスリン抵抗性の改善が顕著なのかもしれません。