糖尿病食事療法日米比較(7)

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栄養素摂取比率をどのように定めるか?

冒頭のステートメントでは

糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養素比率について,これを設定する明確なエビデンスはない.
患者の身体活動量,併発症の状態,年齢,嗜好性などに応じて,適宜,柔軟に対処する.

と記載されています。栄養素の摂取比率は人それぞれでよいと言っている、と解釈できそうです。
一方で

各栄養素についての推定必要量の規定はあっても,相互の関係に基づく適正比率を定めるための十分なエビデンスには乏しい.また,特定の栄養素が糖尿病の管理にかかわることを示すエビデンスは認められない.
このため,栄養素のバランスの目安は,健常人の平均摂取量に基づいて勘案してよい.・・・・・・
以上のことから,2013年に出された「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」では,炭
水化物を50~60%エネルギー,タンパク質20%エネルギー以下を目安とし,のこりを脂質と
するが,脂質が25%エネルギーを超える場合は,多価不飽和脂肪酸を増やすなど,脂肪酸の
構成に配慮をするとしており,一定の目安としてよい

やはり、日本糖尿病学会が目安とする栄養素比率はあります。

適正比率の十分なエビデンスがない、と認めているのだから、あまりこの比率にこだわらなくてよいと思うのですが、実際にはこの比率で栄養指導などがなされているのではないでしょうか。また、「糖質制限」と言ったとたんにアレルギー反応のように強い反発があるように感じますが。

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炭水化物の摂取量は糖尿病の管理にどう影響するか

冒頭のステートメントの最初に

炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク,糖尿病の管理状態との関連性は確認されていない

とあります。そのそもこれは学術的な客観的論考ではなく、ガイドラインですから仕方ないと思いますが、いろんな研究を引用しているものの主張に都合の良いものだけを引用しています。例えばここではアメリカ糖尿病学会のコンセンサスレポートのことにはまったく触れていません。研究結果があることを示して客観性があることやガイドラインの正当性を主張する意図なのでしょうが、なんだかずるい感じがします。
長々と 続くこの段落の最後は以下です。

糖尿病における炭水化物の至適摂取量は,身体活動量やインスリン作用の良否によって異なり,一意に目標量を設定することは困難である.併発症や薬物療法などの制約がなければ,柔軟な対応をしてもよい.しかし,総エネルギー摂取量を制限せずに炭水化物のみを極端に制限することによって減量を図ることは,その効果のみならず,長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており,現時点では勧められない.

糖尿病の予防や管理のために、「減量のために、総カロリーをコントロールすせずに行う糖質制限」というものは存在しないのではないでしょうか。唐突というか不自然な印象を持ちます。

これは憶測ですが、江部先生推奨する糖質制限が、このように(意図的に)印象付けられているような気がします。亡くなったジャーナリストの桐山秀樹氏などが行っていた「おやじダイエット部」はカロリーを気にせずためることを強調されていたように思いますし。
『糖質制限ならカロリー無制限に食べてよい』という食事方法は今は見かけないように思うのですが、私の認識が違っているのですかね。

糖尿病患者にとっては、
「血糖コントロールのための糖質制限」であり
更には、その人の状況に合わせて
「血糖コントロールのために、適切な総カロリーを取って行う糖質制限」
だと思っています。

日本糖尿病学会は、糖尿病治療として血糖コントロールのために行う糖質制限及びその成果については、存在を無視しているのが現実と感じます。
つまり、私のように
「HbA1c9.6からほぼ糖質制限だけで合併症リスクが少ないHbA1c6.0まで改善しそれを維持している患者」
は、存在しないものと扱われているようです。
残念ですね。
多数派か少数派かはわかりませんが、実際に糖質制限でコントロールできている患者があることを認めてもよいと思うのですが。

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