しらねのぞるばさんから、コメントをいただきました。
栄養指導を受ける患者は知っておいた方がよい情報と思いますので、コメントを記事にして掲載します。
それにしてもぞるばさん、管理栄養士の試験まで受験されているとは、、、、正体は何者なんだ?
私は 管理栄養士の国家試験問題に毎年挑んでいますが,ほぼ全問正解できます.もちろんこの試験は,管理栄養士として基本的な知識を問うものであって,これが管理栄養士の医学・薬学・栄養学知識のすべてだとは思いませんが,この程度のことなら,自らの糖尿病を克服しようと必死になっている糖尿病患者が身に付けているのは当たり前です.『私たちは専門家だ,患者は常に無知だ』と決めつけるのは間違いでしょう.
さらに,昨年(第32回)の試験問題を見ると;
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199813.html
午後の第124問:
54歳体重50kgの糖尿病 女性事務員の最適な食事は,1500kcal,炭水化物66%が正解
などと,糖尿病学会が 極端な低カロリー食は誤りであったと検討を開始しているまさにその最中に,いまだにこれが『正しい専門知識』とされているのです.
米国に行った時に,たまたま奥様が登録栄養士(Registered dietician),つまり日本の管理栄養士にあたる人がいて,先方宅のDinnerに招待された際,詳しく話をうかがうことができましたが,
米国の登録栄養士と,日本の管理栄養士を比較すると;
[米国]
資格は免許制であり,資格取得試験だけではなく,5年毎に最新医学知識でUpdateしていないと登録抹消される.単に栄養管理実務だけでなく研究分野に進み,学会・論文発表などで,博士号取得,キャリアップをめざす人も多い.
[日本]
大学で所定の単位を修めた後,国家試験に一回合格すれば,終身資格となる.
全然レベルが違いすぎました.
たしかに管理栄養士国家試験に合格できる人ならば,通常の医学文献,薬学文献を読み解くのに必要な基本知識はお持ちでしょう.
しかし,その基礎スキルをベースにして,卒業後最新の医学文献を読んでUpdateしている人が,いったいどれほどいるのでしょうか?
毎年 日本病態栄養学会に参加していますが糖尿病では毎年40件ほどの発表,そして各種学会誌での報告,これが日本の栄養学における学術報告のほぼすべてではないでしょうか.まして海外医学誌でAcceptされた論文となると,東大の佐々木敏先生が言われたように『国際的な学術報告の1%にも満たない』(2018年 第61回日本糖尿病学会 シンポジウム31-2)という有り様です.データ栄養学の専門家であり,来年度発表の 厚労省:『日本人の食事摂取基準 2020年版』策定委員でもある佐々木先生も嘆くレベルなのです.
私は、社会保険制度が患者にとってマイナスに作用しているケースでもあると思っています。
栄養指導の質によって価格が変動しないこと、保険診療のため、患者自身がお金を払っている自覚が薄い、医療者はお客様である患者からお金をいただいている感覚に乏しくなる、などなど、これは弊害と言ってよいのではないでしょうか。
コメント
> 管理栄養士の試験まで受験
いえいえい,私は栄養科卒ではないので,受験資格はありません.
ただ勝手に厚労省のHPから問題をダウンロードして,制限時間内に回答し,自己採点しているだけです.
今年の試験問題もすでに公開されていますので,一度腕試しでもしてください.
毎年 ほとんどレベルは変わりません.
>社会保険制度が患者にとってマイナスに作用している
欧州では,薬価を算定するにあたり,その効果(患者の存命率,投薬により節約できる他の医療費など)とみあっているかどうか,厳密に評価しようという流れになっていますね.
日本で開発されたから,というだけの理由で日本の病院では多用されている,高価なのにさっぱり効かない某パーキンソン病の薬など,欧米では認可がおりていません.
しらねのぞるばさん
失礼しました。てっきり受験しているものと早とちりしていました。それにしても毎年試験のン台に取り組んでいらっしゃるのはどんな理由ですか。
そちらに興味がわいてきました。
>毎年試験の問題に取り組んでいらっしゃるのはどんな理由
【1】
一つは 厚労省が,年々管理栄養士のレベルを上げようとしているのかどうかを知るためです.
管理栄養士の合格者数は毎年1万人ほどですが,法律により管理栄養士を配置する義務のある施設からの求人はほとんどありません.現在 管理栄養士試験に合格しても,大規模病院や給食施設への就職は狭き門なのです.自宅近くの大病院に管理栄養士として就職できれば,転勤はないし,長期間安定した職を得られるので,誰も辞めないからです.そこでかなりの人は食品会社などに就職しているのが実情(こちらの求人は好調)なので,本来であれば.管理栄養士の合格者数を年々絞り込んでいくべきなのですが,そうすると栄養科・家政科が主軸の大学には死活問題になってしまいます.
ただいつまでもこの状況は続けられないし,そもそも 日本病態栄養学会が目指す姿(= 管理栄養士を,医師・薬剤師・看護師 と対等な権限を持つ資格,つまり米国の登録栄養士並みにしたい)を実現しようとするなら,管理栄養士試験の合格レベルは年々上げていって,高度専門職にすべきなのです. そこで厚労省にそういう意思があるかどうかが,この試験問題を見ていれば検出できるだろうという考えです.ただここ数年を見る限り,まったくレベルは変わっていません.【2】にも書きましたが,糖尿病の人からみれば「なんだ,この程度か」というレベルです.
【2】
二つ目は 日本糖尿病学会の食事療法ガイドライン変更が行われるのなら,その影響を真っ先に受けるのは管理栄養士なので,当然 ガイドラインの変更に先んじて,まず関連する試験問題が変更されるだろうという,「前兆」把握のためです.
実際,昨年度午後の糖尿病食事療法に関する問題(*)は
第124問
54 歳、女性。現体重52 kg、標準体重50 kg、事務員(軽労作)。合併症のない2型糖尿病と診断された。この患者の1 日当たりの目標栄養量の組合せである。最も適切なのはどれか。1 つ選べ。
—– エネルギー — たんぱく質 — 脂質 —
(1) 1,500 kcal 60 g 40 g
(2) 1,500 kcal 80 g 60 g
(3) 1,750 kcal 60 g 40 g
(4) 1,750 kcal 80 g 60 g
→ 正解は (1) カロリー制限食で炭水化物比率 66% なお, 1500kcal ÷ 50kg = 30 なので身体活動量は 30としていることが分かります,食品交換表の「軽労作の場合は 25~30」の上限です.
だったのですが,今年の問題では
第125問
55 歳、男性。身長170 cm、体重65 kg、BMI 22.5 kg/m2、普通の労作。血糖コントロール不良により強化インスリン療法(毎食前超速効型インスリンと就寝前持続型インスリンを注射)が導入された2型糖尿病患者の栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1 つ選べ。
(1) エネルギー摂取量は、30〜35 kcal/kg 標準体重/日とする。
(2) 炭水化物エネルギー比率は、50〜60%E とする。
(3) 食事はインスリン注射後、直ちに摂取する。
(4) 低血糖発作時には、ブドウ糖を摂取する。
(5) シックデイ時には、水分の摂取量を制限する。
→ 正解は (5) つまり,(1)~(4)は正しいとしているので,昨年同様,「普通労作」の身体活動量を30~35,炭水化物を 50〜60%として,食品交換表から一歩も出ていません.
したがって,想定される 2019年度版 学会ガイドラインでは,カロリー制限食 推奨は変わらないと予想しています.ただ 「ただし,すべては医師が患者の病態により個別判断する」程度の文章をつけるのではないかと思っています(これですら 猛反対している理事もいるようですが).
(*)余談ですが,管理栄養士国家試験の問題では,出題順と出題分野が毎年ほぼ同じです.
【3】ボケ防止
半分本気です. 試験などというものは,社会に出てしまうとまったく縁がなくなります.決められた時間内に考えて決断を下す,その訓練になると思います.
しらねのぞるばさん
ありがとうございます。
本当にすごい、というか言いようがないです。
しかし一方で、やはり栄養指導に時間とお金を割く必要はなさそうだとますます思いました。