アメリカ糖尿病学会のコンセンサスレポート その2ー糖質制限を推奨しているのか

アメリカ糖尿病学会のコンセンサスレポートの続きです。

GI(glycemic index)やGL(glycemic load)の血糖への影響は?

糖尿病患者には依然として関心がもたれているが、2つのシステマティックレビューによれば、GIとGLは、A1Cに有意な影響は見いだせていない。さらに、研究によって低GIや高GIの定義がさまざまであり、臨床におけるGIおよびGLの有用性に不確実だ。

GIやGL(GLは私はあまり聞いたことがないですが)は、血糖コントロール効果は根拠がないとかなり明確に否定されている印象です。(エビデンスがないということですから、エビデンスが出てくればまた変わるのでしょうが)

糖尿病患者の脂肪とコレステロール摂取の目標は何か

全米医学アカデミーは、成人の総脂肪の許容量を総カロリーの20〜35%と定めている。定義した。しかし、炭水化物食品をより高脂肪食品に換える食事パターンは、低脂肪食と比較して、血糖値およびCVD危険因子の大幅な改善を示している。・・・・

これは、総脂肪の許容量を総カロリーの20〜35%を超えて摂取し、炭水化物を制限することが、血糖コントロールとCVDリスク低下に有効、と言っているように思えます。
糖質制限の積極的肯定に思えます。

食事パタ-ンの推奨事項

・糖尿病対処には、さまざまな食事パターンが認められる(acceptable )

・異なる食事パターンの有益性がはっきりするまで、医療提供者はさまざまパターンに共通する要因に焦点を当てるべきである
○でんぷん質のない野菜を強調する
○砂糖や精製穀物を最小限に
○可能な限り、加工食品よりもホールフードを食品全体を

これは玉虫色というか、地中海食、低脂肪食、低炭水化物食、DASH食、ビーガン、何でもあり、とも感じられます。多くのパターンに共通することから推奨するってエビデンスに基づく思想ではないように思うのですが。

・糖尿病患者が炭水化物を減らすことで血糖コントロールを改善することには、最も多くのエビデンスがあり(has demonstrated the most evidence for improving glycemia)、それは個人のニーズや好みに合ったさまざまな食事パターンに適用することができるだろう。

・血糖値の目標を達成しない糖尿病患者や薬の量を減らす患者には、低炭水化物食か超低炭水化物食で炭水化物量を減らすことが実行可能なアプローチだ。

上の二つは、どうみでも糖質制限を推奨していると思えます。
様々な食事パターンが認められると言いつつ、低炭水化物食の血統コントロール効果をはっきりと言っていると感じます。

食事パターンのエビデンス

内容は省略しますが、取り上げられている食事パターンは以下です。

地中海食
ベジタリアンorビーガン
低脂肪食
超低脂肪食(Very Low-Fat: Ornish or Pritikin Eating Patterns)
低炭水化物食or超低炭水化物食
DASH食
パレオ食
間欠的ファスティング

これらについてエビデンスを紹介しており、その評価の結論が、先に示した「糖尿病患者が炭水化物を減らすことで、血糖コントロールを改善することをに最も多くのエビデンスがある」ということなのだろうと思われます。

ただ、その次の次の見出しが、「現在のエビデンスは特定の食事パターンを支持するのか?」となっていて、

異なる食事パターンの有益性がはっきりするまで、医療提供者はさまざまパターンに共通する要因に焦点を当てるべきである

と再び書いています。

感想-コンセンサスレポートは糖質制限を推奨しているのか?

このコンセンサスレポートについて、ドクターシミズは、ブログの記事のタイトルに、

糖質制限を推進! と書き、

江部先生はブログの記事の中に

エビデンスが最も豊富であるとして、糖質制限食が一番積極的に推奨されています。

と書いています。

コンセンサスレポートの食事パターンについての推奨事項は、このレポートに複数回出てきました。強調されているように感じます。

・糖尿病対処には、さまざまな食事パターンが認められる(acceptable )

・異なる食事パターンの有益性がはっきりするまで、医療提供者はさまざまパターンに共通する要因に焦点を当てるべきである
○でんぷん質のない野菜を強調する
○砂糖や精製穀物を最小限に
○可能な限り、加工食品よりもホールフードを食品全体を

ですから、糖質制限を推奨しているとは言えません。

一方で、

糖尿病患者が炭水化物を減らすことで、血糖コントロールを改善することをに最も多くのエビデンスがある

血糖値の目標を達成しない糖尿病患者や薬の量を減らす患者には、低炭水化物食か超低炭水化物食で炭水化物量を減らすことが実行可能

など、かなりはっきり糖質制限を認める記述もあります。

このコンセンサスレポートのアメリカ糖尿病学会の中での位置づけはわかりませんが、糖質制限についてエビデンスも増え、支持する人が増えているのだろうなあ、と憶測します。

日本糖尿病学会と最も異なるのは、これは以前からですが、

炭水化物、タンパク質、および脂肪からのカロリーの理想的な割合はないことをエビデンスが示している。

としている点だと思います。

日本糖尿病学会は、2013年の提言で以下の記述をしています。

糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物 50~60%エネルギー( 150g/日以上 )、たんぱく質 20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。この炭水化物の推奨摂取比率は、現在の日本人の平均摂取比率がこの範囲にあり、他の栄養素との関係からも妥当と考えられる。

栄養指導などの現場のためには、何らかのよりどころ、基準を示すことが必要なのかもしれません。しかし、この根拠が健康な人の平均摂取比率というのはかなり苦しいというか、それがまかり通るのは、科学ではない、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 

コメント

  1. 122 より:

    こんにちは。
    初めて書き込みをいたします。
    →可能な限り、加工食品よりもホールフードを食品全体を
    なんですが、パン、うどん、そば、お好み焼き、ソーセージ、ハムのことでしょうか?
    それ以外の飲料(缶ジュース)やソース、ケチャップ、そばつゆ、などはいかがでしょうか?
    とくに、こちらをネガティブに捕らえるのは、たしかなエビデンスがあるのでしょうか?
    調味料、食品添加物、香料など危険視されているものもあります。
    はっきりゆうと・・・
    なにを食えばいいっていゆうんだぁぁぁ~~~!!!
    と、ゆう気持ちになってしまいます。
    いや~~~こまったもんです。

    • ホリデー より:

      122さん 初めまして。コメントありがとうございます。

      ホールフードの定義は知りませんが、例えば穀物なら精製白米ではなく玄米、野菜や果物は皮ごと、といった意味なのではないかと思います。
      私は、糖質量を抑えること以外はあまり気にせず食べています。例えば加工肉であるベーコンとかソーセージもビジネスホテルの朝食ではカロリー補給のために必ずと言っていいほど食べます。大量には食べませんが。
      あまり気にしていません。