糖尿病とは
「糖尿病とはインスリン作用の不足のためにブドウ糖が有効に使われず、長い間血糖値が普通より高くなっている状態をいいます。
糖尿病を治癒せずに放置すると様々な合併症を引き起こします。自覚症状に乏しい軽い糖尿病でも長く放置すると合併症を引き起こします。」(日本糖尿病学会 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手引き2017 )
血糖値による糖尿病の判断基準
糖尿病域 | 正常域 | ||
血糖値 | 朝の空腹時血糖値 | 126以上 | 110未満 |
随時血糖値(注1) | 200以上 | ||
75g経口糖負荷試験2時間値(注2) | 200以上 | 140未満 | |
HbA1c(注3) | 6.5以上 |
(注1)随時血糖値とは、食前とか食後とか時間帯にかかわらず、という意味です。24時間いかなる時でも200を超えたら糖尿病かも?ということです。(糖尿病でなくても実際は食後に200を超えることはあるようです)
(注2)75g経口糖負荷試験は、糖尿病かどうか疑わしいときなどに行われる試験です。私の場合糖尿病発覚時に随時血糖値308、HbA1c9.6で何の迷いもなく糖尿病ですので、この検査は受けたことがありません。
(注3)HbA1cは、約2か月の血糖値の平均を示す指標です。血糖値は食前食後など測定するタイミング、その日の体調などによりばらつきがありますが、HbA1cは平均値ですから、血糖値よりばらつきが少ない指標といえます。
「境界型」というのは、糖尿病域と正常域の間にいる人と理解してよいでしょう。
*厳密な診断基準を知りたい方は、医師のサイトや糖尿病学会発行の書籍をご覧ください。
糖尿病の怖さ-合併症
私は糖尿病発覚まで糖尿病についてよく知りませんでした。
しっていたのは、、生活習慣ではなく、遺伝的に糖尿病になり一生インスリン注射をしないといけない人がいること(知人でいたので)くらいです。
一生治らない、進行性で徐々に悪くなる、足の切断、失明、透析、心筋梗塞など、様々な病気の引き起こす、、、このようなことをしってかなり焦りました。
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと合併症を生じます。
・糖尿病の合併症には『細い血管の病気』と『太い血管の病気』があります。
・細い血管の病気は三大合併症と呼ばれ、糖尿病網膜症は進行すると視力障害に、糖尿病腎症は腎不全に至ることがあります。
・糖尿病神経障害も細い血管の病気のひとつです。
・太い血管の病気には動脈硬化による脳卒中、心筋梗塞、糖尿病足病変があります。」
(日本糖尿病学会 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手引き2017 )
1.糖尿病網膜症
糖尿病患者の15%が糖尿病網膜症にかかっています。年齢が高くなるとその比率は高まり、厚生労働省糖尿病調査研究班による合併症調査(平成2年)によると、50~60歳代の糖尿病患者のうち、38.3%の割合で網膜症を合併していることが報告されています。
糖尿病網膜症による失明者は年間3000人です。
私は糖尿病発覚時に受診した糖尿病専門医に、次回までに眼科に行ってくるようにと指示をされました。結果は大丈夫でほっとしましたが、眼科医からは「通常は年1回検査しますがHbA1Cが高いので半年後に再受診してください」と指示されました。血糖値が高いほど網膜症の発生の危険度は高いようです。
2.糖尿病網腎症
「高血糖が続くと尿にたんぱく質がもれだします。糖尿病のために腎臓が悪くなった状態が漏れ出します一般に腎臓の働きが悪くなると、血圧が上昇し、尿中のタンパクが多くなって体がむくみます。さらに進行すると、血液中に有害な老廃物がたまり、生命にかかわる重篤な症状を引き起こします。」 (日本糖尿病学会 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手引き2017)
「日本透析医学会が毎年実施している統計調査「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2015年12月時点で、国内で透析療法を受けている患者数は32万4,986人で、前年度より4,538人増加した。透析の導入患者の原疾患の第1位は糖尿病性腎症で43.7%に上る。」 (糖尿病ネットワーク)
糖尿病による人工透析導入は年間16000人です。
透析って大変だけれども他人事、と思っていましたが透析を始める原因の4割が糖尿病の合併症とのこですから、糖尿病患者には他人事ではありません。
有名人で糖尿病から人工透析に至ったことがよく話題になるもいらっしゃいます。たとえば
グレート義太夫さん、渡辺徹さん、故香川伸行さん(ドカベン、元南海ホークス)
3.糖尿病性神経障害
神経障害は、「網膜症」「腎症」とあわせて糖尿病の3大合併症といわれますが、糖尿病患者の30~40%が発症する最も多い合併症です。
人間の体の神経(末梢神経系)は、感覚(知覚)神経、運動神経、自律神経にわけることができますが、糖尿病神経障害は主に感覚神経の障害をいいます。
手足の感覚や運動をつかさどる末梢神経が障害される『末梢神経障害』 血糖のコントロールの悪い状態が長く続くと、眠れないほどの痛みが足に出ることがあります。逆に感覚がマヒして『たこ』や『うおのめ』の痛みを感じなくなることもあり、そのために手当てが遅れます。場合によっては足の潰瘍や壊疽まで進んでしまうことがあります (日本糖尿病学会 患者さんとその家族のための糖尿病治療の手引き2017)
糖尿病で足や足の指の切断をした有名人、
故村田英雄さん 谷津嘉章さん(プロレスラー)
元横綱の北尾さんも医師から両足切断を告げられたが断り、最後は慢性腎不全で亡くなりました。
自律神経系がダメージを受けると、胃腸(下痢や便秘)、心臓(不整脈、動悸)、立ち眩み、勃起障害など様々な症状が発生します。これは糖尿病が原因かどうかはっきりしないこともあるので、糖尿病神経障害とはあまり言わないのかもしれません。
患者視点では自律神経にもダメージがありえ、体中に様々な症状が出ることがあり得る、体調不調があったら糖尿病が原因と考えることも必要かもしれない、とはいえそうです。
4.動脈硬化
動脈硬化とは、動脈の血管の壁が固くなることなどで、血行が悪くなり詰まりやすくなってくることです。血管の老化と言われるように、加齢が一つの原因で、また動脈硬化そのものを治すことはできません。動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわったり後遺症を残す病気を発症します。
動脈硬化の原因は加齢のほかに、高血糖、高血圧、高脂質(特に悪玉コレステロール、中性脂肪)、喫煙などがあります。
中高年で、メタボで糖尿病というのは、高血糖、高血圧、高脂質と動脈硬化の原因のオンパレードで心筋梗塞、脳梗塞へまっしぐら、なのかもしれません。
合併症以外の糖尿病に関連する病気や症状
ここまで書いた合併症以外にも糖尿病によくある症状や、関連すると思われる病気があります。後日書き加えます。
合併症を防ぐ血糖コントロールの目安
「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」「動脈硬化」いずれも、血管のダメージが症状・病気を活性させます。
糖尿病による高血糖は、血管を損傷し、それにより様々な病気や症状が発生します。糖尿病になったその日に合併症が発症するわけではありませんが、高血糖は日々血管にダメージを与え、一日一日確実に合併症の発症に近づいている、と言ってよさそうです。
どの程度の血糖値、血糖コントロールできればあれば合併症を防ぐことができるのでしょうか。
日本糖尿病学会の基準は以下の通りです。(2013年6月1日以降)
HbA1c 6.0未満:血糖正常化を目指す際の目標
HbA1c 7.0未満:合併症予防のための目標
HbA1c 8.0未満:治療が困難な際の目標
この根拠の一つに、熊本スタディという研究があります。8年間の追跡調査でHbA1Cが6.5%未満、空腹時血糖値が110mg/dL未満、食後2時間血糖値が180mg/dL未満が合併症予防と進行抑制に有効とされました。
この研究は合計110名の2型糖尿病患者を対象にしています。110名もあれば十分なのか、たった110名で大丈夫か?は意見の分かれるところだと思います。
私は、110名では少なすぎると思います。なぜなら、HbA1Cが6.5%未満、空腹時血糖値が110mg/dL未満、食後2時間血糖値が180mg/dL未満の人の数は、10名~20名程度ではないかと思われるからです。たった10~20名の人で合併症が発症しなかった、進行しなかったということが、大丈夫という根拠にできるのか、という気もします。糖尿病学会はその他のデータも参考にして基準を決めているのでしょうが、絶対大丈夫とは言えない基準であると私は思っています。
とはいえ、HbA1c7%を超えていれば合併症の危険あり、は、一つの目安になります。
HbA1c7%以上の糖尿病患者は、合併症のリスクを下げるために、まず6%台を目指した方が良いと考えられます。
以下のグラフは、糖尿病網膜症の発症と糖尿病罹病期間とHbA1cの関係について、「糖尿病最初の一年 グレッチェン・ベッカー著」)の表をグラフ化したものです。
グラフの滑らかさを見ると、実測値ではなく何らかのシミュレーション数値だと思われますが、
糖尿病合併症は、血糖値が高いほど発症の確率が高く、また罹病期間が長いほど発症確率が高いことがわかります。
糖尿病合併症を防ぎたかったらHbA1c6%未満をめざした方がよさそうです。
糖尿病は治るのか?
糖尿病は治らない病気です。進行性の病気で年数を経過するとどんどん悪くなります。
私は、糖尿病発覚時に糖尿病専門医から以下のように言われました。
「糖尿病は治りません、必ず合併症は出ます。ひどい場合は網膜症で失明したり、壊疽で足を切断したり、脳梗塞や心筋梗塞もあります。糖尿病の人は普通の人の30倍以上心筋梗塞の発症率は高いです。あなたの場合喫煙歴があるからさらに高くなります。糖尿病の治療とは、足の切断とか失明に至らずに生涯を終えるようにすることです。」
糖尿病が治った話も見かけることがあります。
長期間の罹病でない場合、治ることもある、というのが定説のようです。ただ、糖尿病と診断された時には数年前から高血糖状態があり膵臓がダメージを受けている場合が多く、そういう場合は治ることはまずありません。
治る可能性を追求したいのなら、一刻も早く治療し血糖コントロールを改善することです。
糖尿病患者のブログなどで、「治りました」の類の話がありますが、その人が治った方法をまねしたからと言って治るわけではない、ということも頭に入れておく必要があります。自分に合わない方法では糖尿病を悪化させることすらあります。
糖尿病の治療方法
糖尿病の治療方法は、食事、運動、薬 が3本柱です。
他の病気との違いは、薬で治るものではなく、食事や運動の重要度が高いことだと思います。
治療方法は別の記事にします。
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